今と同じ夫ともう一度結婚したい妻は半分以下
明治安田生命がいい夫婦の日(11月22日)にちなんで実施したアンケートで、約8割の夫婦が「円満」と回答した一方、「生まれ変わっても同じ相手と結婚するか」という質問に対し、「結婚する」と答えたのは夫53%、妻40%、「結婚しない」と答えたのは夫14%、妻26%、そして約8割の妻が「夫に不満あり」と回答していることが分かった。
妻が夫の何が不満かというと、(1)気が利かない、(2)整理整頓ができない、(3)家事の協力をしない、がTOP3。逆に夫は、(1)整理整頓ができない、(2)気か利かない、(3)体型が変わってきたところ、だという。
神奈川大学人間科学部の杉山崇教授は、お互いに期待し過ぎなのだという。
「家族社会学の研究で、夫への期待度が高い妻ほど夫への不満が高いという結果が出ています。期待すればするほど、裏切られた感が強くなってしまうのです。『気が利かない』『整理整頓ができない』『家事の協力をしない』『体型が変わってきた』といった不満には、期待と裏切りが透けてみえますよね。
こうした不満や裏切られた感を減らすには、相手の期待値を下げさせることです」(杉山先生。以下「 」内同)
少しずつがっかりしてもらえば、うまくいく
「期待値を下げる、というと嫌な感じがしますが、お互いにうまくやっていくには、とても大事なポイントなんですね。いきなりがっかりさせてしまうと、それこそ離婚につながりかねないので、ゆっくり少しずつがっかりしていってもらう。
人生にはいくつかリセットポイントがあります。年を取って、あまり体が動かなくなってきた、とか、大病をした、とか。そうしたリセットポイントをうまく利用して、少しずつがっかりしていってもらいましょう」
そしてもうひとつ、杉山先生が指摘するのが、役割分担の難しさ、である。
なぜ福井県の夫婦は幸せなのか
杉山先生は日本テレビ系『所さんの目がテン!』に時折出演している。その取材で今年6月、都道府県別幸せ度1位の福井県を訪れた時、福井の一般家庭を取材して、他県と大きく違うところに気がついたという。
「福井県というのは女性就業率1位、総菜消費量1位でもある。つまり共稼ぎが多いのです。総菜売り場が驚くほど広くてたくさんの惣菜が売られています。奥さんは総菜を買って帰るし、ご主人もそれが当たり前だと思う、そういう文化が根づいています。
もうひとつびっくりしたのが、取材したいくつかのご家庭すべてで、家事が分担制ではなかったことです。できる方がやるんです。奥さんが台所で忙しくしていたらご主人が掃除をし、ご主人が皿洗いをしていたら奥さんが子守をする。家庭内に男女の役割分担意識がほとんどないんですね」
役割分担は合理的に見えるが、亀裂を生むことも
「役割分担はとても合理的に見えますが、相手が決められた役割を十分に果たしていないと不満に思う、それどころか自分に対して不利益を与えていると思ってしまうのです。
皿洗いや掃除を1回さぼっただけで生活に支障はないのですが、相手が決められたことをしないと、自分に損害を与えていると思いこんでしまうんです。人間は得をすることより損をすることに敏感なので、そこで攻撃的になって喧嘩になります。意外に役割分担制は夫婦に亀裂を生む場合もあるのです。
福井のご家庭は共働きが多いので、稼ぐのは御主人で家事は奥さんという分業もなく、家事でも料理は奥さんでゴミ捨ては御主人といった役割分担がない。どちらか手が空いたほうが自然とやる。総菜が食卓にのぼる率も高いので、ご主人も手料理を期待する率は低いでしょう。そうしたことが県民の幸せ度日本一につながっているのだと思います」
気をつけたい「できていないこと探し」
人間は相手に対して、信頼できる存在だと考えるより、裏切る存在だと考えがちだと、杉山先生は指摘する。そして絶えず裏切者を探している。これが私たちの脳内にあるシステム『裏切り者探索モジュール』だ。
「職場でも、家庭でも、私たちは常に、相手ができていることより、相手ができていないことを探しがちです。それはそのほうが脳にとって快適だからです。
『裏切者探索モジュール』はリスク回避のためのシステムなのですが、あまりにそれを発動しすぎると、目の前の幸せを逃してしまいます。
あまり相手に期待しすぎないこと、“できていないこと探し”を止めること。そうしたことも、幸せに生きていくためのヒントになるはずです」
すぎやま・たかし 神奈川大学人間科学部教授、心理学者
1970年山口県生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科にて心理学を専攻。医療や障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルス、子育て支援など、さまざまな心理系の職域を経験、脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法の開発・研究に取り組んでいる。臨床心理士、1級キャリア・コンサルティング技能士。『ウルトラ不倫学』『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』等著書多数。
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