圧倒的なボリューム感。これぞ豊穣のビーナス
縄文のビーナスは360度どこから見ても「オオッ!」となる。
真正面からはハート形をしたお顔。斜め横からは全体のふくよか極まりないフォルム。真横からは上品に垂れた腹と尻。背後からはどっかーんと左右に張り出した両臀部。そして上からは頭頂部の髪型なのか帽子なのかわからない渦巻文だ。
この縄文の最大のスター、縄文のビーナスの魅力はそれだけではない。全体がまるでラメをかけたかのようにキラキラしているのだ。
ビーナスの美肌はこうして生まれた
その秘密は雲母片(うんもへん)。なんと現代のファンデーションなどにも配合されているのと同じような成分が、粘土に混ぜられて全身に使用されているのだ。
こうした雲母片は一般の土偶には用いられないという。縄文のビーナスはどこまでも特別なビーナスなのだ。
この縄文のビーナスの美肌を心ゆくまで眺められるのが、『週刊ニッポンの国宝100』第9号「縄文のビーナス・源氏物語絵巻」(小学館刊)。特集「国宝原寸美術館」では、まあ珍しい、ちょうどA4サイズの誌面に合わせたかのように収まる、原寸ビーナスが見て取れる。
そう、その高さは27センチ。A4正寸のタテは29.7センチだから、本当にちょうどぴったり。もし原寸のレプリカがあったら、ぜひ本棚に飾りたいほどだ。
土偶に潜む謎を考える
この縄文のビーナスが出土したのは長野県茅野市の棚畑遺跡だが、その14年後、同じ茅野市の中ッ原遺跡から同じく完全体に近い土偶が出土した。こちらは「仮面の女神」と名付けられ、「縄文のビーナス」同様、国宝に指定された。こちらも茅野市尖石縄文考古館に所蔵されている。
本サイトでは、この2つの土偶について、考古学者・高橋龍三郎先生(早稲田大学教授)の講座を取材したことがある(「土偶から考える、日本人の〈呪い〉って!?」)。二つの土偶とも「わざわざ」横倒しで埋められたことについての、考古学者の意見が読める。ご一読いただければ幸いである。
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文/まなナビ編集室 写真協力/小学館