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仕事に恋ができない病─「新型うつ病」の特徴とは

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仕事となると落ち込んで、まるでうつ病のような状態が続くのに、遊んだり好きなことをしている時は元気になる、これが「新型うつ病」だ。周囲の人からは「わがまま」「自分勝手」と見られがちだが、本人はつらさを訴え、時に上司や周りを攻撃する。現代に増えつつある「新型うつ病」について、心理学者で神奈川大学人間科学部教授の杉山崇先生に学ぶ。

平日は仕事ができないほど落ち込むのに休日は楽しく出かける

ちょっと注意されたただけなのに、人格を全否定されたように傷ついてしまい、うつ病のような症状を示して、業務の遂行や出勤すらもできなくなってしまう。しかし同僚との飲み会などにはよく出てきているらしいし、休日は旅行もしているらしい。

こういった、本当にうつ病なのか、と思われるような症状を呈する人が、特に若い人を中心に増えてきているという。

周囲は理解できず、「病気じゃなくて単にわがままなだけじゃないのか」「自分勝手が過ぎるよ」など思っているが、本人は死にたくなるくらいつらくてたまらず、落ち込んでいる時は日常生活を送ることもままならない。

それが俗に「新型うつ病」と呼ばれるものだ。従来のメランコリー型うつ病や気分変調性障害などとは異なる症状があるため、それらと区別して正式には「非定型うつ病」という。「新型うつ病」とはマスメディアなどが名付けた俗称である。

職場と上司が嫌いで、食べすぎ・眠りすぎの傾向が

杉山先生によれば、新型うつ病(非定型うつ病)は、次のような点で従来のうつ病(メランコリー型うつ病)と異なっているという。

〇うつ病では落ち込んだ状態がずっと続くのに対して
新型うつ病では気分の変化に浮き沈みがある

〇うつ病では自分に対していら立つのに対して
新型うつ病では他者(上司や同僚など)や仕事の内容にいら立つ

〇うつ病では午前中、とくに目覚めた直後に落ち込むのに対して
新型うつ病では夕方に落ち込みが激しくなる

〇うつ病ではどこにいてもつらいのに対して
新型うつ病では職場やその周辺にいるとつらい

〇うつ病では休日もつらい状態が続くのに対して
新型うつ病では休日は気分が回復して元気になる

〇うつ病では食欲不振や不眠になるが
新型うつ病では過食や過眠になる

〇うつ病ではネガティブに自己を統合するのに対して
新型うつ病では自己矛盾を自覚しない

これだけ、うつ病と新型うつ病には相違点があるが、ともに「他者や社会からの拒絶感が高い」ということでは一致している。

新型うつ病は《仕事に恋ができない病》?

これをわかりやすく図示したものが杉山先生が作成した次の図だ。矢印は注目する方向を示す。

従来のうつ病と新型うつ病の違い(講座レジュメより)

社会に絶望している点では両者は同じだが、注目する先が違う。うつ病は自分の欠点や将来への絶望感、過去のつらい記憶など、自分の内面に向かうのに対して、新型うつ病は自分をそういう状態に陥らせているであろう他者へ向かう。

とくに攻撃されるのが上司だ。自分がどれだけ虐げられているかを周囲に強く訴える。時には訴えのとおり上司が本当にひどい人物であることもあるが、もしほかの同僚からは評判のいい上司だとすれば、新型うつ病を疑ったほうがよい。

杉山先生は言う、「新型うつ病は《仕事に恋ができない病》なのです」と。

 

杉山崇
すぎやま・たかし 神奈川大学人間科学部教授、心理学者
1970年山口県生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科にて心理学を専攻。医療や障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルス、子育て支援など、さまざまな心理系の職域を経験、脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法の開発・研究に取り組んでいる。臨床心理士、1級キャリア・コンサルティング技能士。『ウルトラ不倫学』『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』等著書多数。

◆取材講座:メンタルヘルス・マネジメント講座「大人の人間関係論 part2」(神奈川大学みなとみらいエクステンションセンター/KUポートスクエア)

取材・文・写真/まなナビ編集室(土肥元子)