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今年こそ字が上手に★でも上達しない人の共通点とは

一人一人に丁寧に指導を行う小嶋先生の講座

1月2日は暦上は書初めの日。受け取った年賀状と見比べて、自分の字にコンプレックスを持ち、ペン習字上達のための書籍を思わず手に取りたくなる。しかし、国士舘大学ペン字講座講師の小嶋帰心先生は「練習よりもっと心がけたいことがあります」という。

自分の字の悪いところに気づくかどうか

小嶋先生が教える、きれいな文字を書くコツの一端を、前の記事「年賀状を書く前にマスターしたい★美文字3つのルール」「年賀状や履歴書、漢字と仮名の大きさ変えればキマる」で紹介した。

しかし、そういったことを知っただけでは、だめなのだという。その理由はただひとつ。

自分の字のどこが悪いのかがわからないから、だ。

「他人の字はよくわかるのですが、人は意外に自分の字についてはわからないものです。それは長年そうした字を書き続けてきているから。

きれいな字を書くための第一は、まず自分の字の悪いところを知ることです。どんなにお手本をなぞり書きしても、自分のクセを客観的に知っていないと、白い紙に書いた時に元に戻ってしまいます。

本を何冊買って読んだり練習したりしても上達しないのは、この“気づき”がないからです。気づかないまま何百回練習しても、ペン遣いなどは上手くなるでしょうが、肝心の字はなかなか上達しません」

気づいた自分のクセを意識して直すかどうか

自分の欠点を指摘されたら、次にそれを意識することが大切だ。

縦棒が曲がらないように横画は心持ち右に上げて「川」「山」などの左右の空きは等間隔に……など、きれいな文字を書くコツはいろいろありますが、人によって欠点が違うので、意識しなければならないところも違います。

どんなに頭でわかっても、書くたびに意識していかないと、ちょっとした時に長年書きなれた字が出てきてしまいます。潜在意識にそうした字が刷り込まれているので、書くたびに意識しないとだめなんです。

自分の欠点に気づく、そして直そうと意識する。これをしなければ、漠然と何百回書いてもあまり意味がありません」

自分の字のどこが悪いのか気づかない。
指摘しても意識して直そうとしない

これがどんなに練習しても上達しない人に共通することだという

ビフォー・アフターが劇的に変わるのが、字

小嶋先生によれば、以上の2つをしっかり実行すれば、驚くほど字が変わってくるという。その変化に気づいてもらうため、講座ではまず最初に、手本も見ずに練習もしないで字を書いてもらい、それを取っておいてもらうという。

「自分で練習していると、本当に上達したのかどうかわからなくなります。そんな時、習う前の文字を見ると、皆さんびっくりされます。それぐらいビフォー・アフターが劇的に変わります。

それはもう、久しぶりに会った親戚の子と同じ。毎日見ているとわからなくても、半年ぶりくらいに会うと、大きくなったなあ、と感慨深いでしょう、あれと同じです」

こうして書いた字について、小嶋先生はひとつひとつ指摘していく

先生を困らせるのが、「どれくらいで上手くなりますか?」という質問だ。

「こればかりは、本人次第というほかありません。早い人だと、本当に3、4回で変わってきます。でも、何年やっても毎回同じところを注意せざるを得ない人もいます。そういう人は、頭ではわかっていても、書くときに意識していないのです」

小嶋先生の講座は、前半は講義、後半は個人指導だ。練習帳に書いたものを先生に見せ、欠点やクセを指摘してもらう。聞いているとその指摘はじつに具体的だ。

「この文字は少し大きく。ここを下げないように」
「左に比べて右が出すぎ」
「縦棒は右下に流れないように。門構えの左右が違い過ぎる」
「空間がつぶれているから、もうちょっと丸みがあったほうがいい」
「『口』というのは正方形じゃないんです。少し下を狭くして」

  文字を見せるのが恥ずかしいとかいっている場合ではない。受講生も自分のクセを直そうと必死なのが伝わってくる。

小嶋先生は言う。

「何才からでも必ず字は直ります。自分のクセを知って、意識して直そうとすれば、必ずきれいな字が書けるようになります。悪筆だからとあきらめないでください」

受講生の一人に見せていただいた練習帳。
丁寧な指摘が入っていてモチベーションが上がる

小嶋帰心
こじま・きしん 書家、書道・ペン字講師。本名、小嶋憲次。
東京教育大学教育学部書道専攻卒業。國學院大學兼任講師。国士舘大学、國學院大學、カルチャースクール等で書道・ペン字講座を指導。著書に、「基本ペン字の書き方」「新書道講座」「初歩の書道教本」「たのしい習字」「臨書入門講座」他。

◆取材講座:「暮らしに役立つペン字講座」(国士舘大学公開講座)

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取材・文・写真/まなナビ編集室(土肥元子)