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リハビリ看護師が説く「健康長寿」3つの柱

いつまでも元気にいるために必要なものは…… (c)fotolia

高齢者の心身が衰え、要介護状態になる前の状態をフレイルという。フレイルにならないようにするためにはどのようなことに気をつけたらよいのか。昭和大学藤が丘病院の脳卒中リハビリテーション看護認定看護師・荻原木染氏は、同大学公開講座で、フレイルを予防し、健康長寿を実現するものとして3つの柱を挙げた。

免疫力を高め体力をつける栄養

フレイルは心身ともに活力が失われた状態だ。その診断基準は、次の5つのうち1つでも当てはまればフレイルの前段階である「プレフレイル」、3つ以上当てはまれば「フレイル」とされる。

(1)体重減少
(2)著しい疲労感の自覚
(3)(握力などの)低下
(4)歩行速度の低下
(5)活動レベルの低下
(詳しくは「高齢者の体重減少は、怖いフレイル・サイクルの入り口かも」参照)

フレイルの先には要介護状態、さらにその先には寝たきりが待っている。フレイルにならないように予防することが、健康長寿の第一歩になる。

健康長寿を実現する柱として、萩原看護師がまず挙げるのが「栄養」だ。

「免疫力を高め体を作るには、しっかり食べることが大切です。活動量が減るとお腹が減らなくなるので、食べる量が減っていきます。そうすると慢性的な低栄養状態になり、筋肉量が低下してきます。

『活動量が減る→食事量が減る→低栄養状態になる→筋肉量が減る→ますます活動量が減る』というフレイル・サイクルに突入すると、転びやすくなります。転ぶと骨折してしまい、長期安静を強いられます。するとますます筋肉量が減り、悪循環に陥ってしまいます。転倒を予防するためにも体力と筋肉が必要です。

ではどういうものを食べればよいのでしょうか。

体力キープの基本はエネルギーとタンパク質です。エネルギーとなる糖質や脂質、血や肉となるタンパク質、体を整えるビタミンやミネラルをしっかりとりましょう」

以下が1日にとりたい食品の目安だ。あくまでも目安なので、別の食品と代替してかまわない。

卵・乳製品(骨を強くし体の力をより高める)
卵1個、牛乳1~2杯、ヨーグルト1個
肉・魚・大豆製品(おもに血や肉の元になる)
薄切り肉3~5枚、切り身魚1切れ、納豆1パック、豆腐1/6丁
野菜・芋・果物(おもに体の調子を整える)
緑黄色野菜100g、淡色野菜(海藻やキノコを含めて)250g、ジャガイモ小1個、リンゴ1/2個
穀類・油脂・砂糖(おもにエネルギー源や体温の元になる)
ご飯1食に1杯、油やバター大さじ約1杯、砂糖大さじ約1杯

なお、これらの食品をまんべんなくとるためには、しっかり歯で噛めることが大切だ。こうした口腔機能が落ちると、柔らかいものしか食べられなくなるので注意しよう。
〔参考記事:80才で自分の歯は何本残る?実態はなんと……

体を健康にし、体力をつける運動

健康づくりのために次に大切なのが、「運動」だ。

それぞれの年齢で必要な運動強度は「メッツ」で簡単に測ることができる。

メッツとは、安静時を1とした時と比較して、何倍のエネルギーを消費するかを示すもので、60分を1区切りとする。たとえば、ウォーキンを60分続けたら3メッツ、ラジオ体操を60分続けたら3.5メッツとなる。(参考記事:「老化防止ならウォーキングより家事」とリハビリのプロ

目安としては、18才~64才までは3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分(23メッツ・時/週)、65才以上なら強度を問わず身体活動を毎日40分以上(10メッツ・時/週)することが望ましい。毎日の家事や買い物などでも2メッツ、3メッツとなるので、ぜひ上記の記事を読んで、自分の活動量をチェックしよう。

これに加えて、あと10分、よけいに運動をしようというのが、厚生労働省が提唱している「アクティブガイドプラス10」だ。

生活の中で、あと10分よけいに散歩したり、いつも降りる駅やバス停のひとつ手前で降りて歩いたり、そうしたちょっとした工夫であと10分運動しようというものだ。

厚生労働省のアクティブガイドプラス10のホームページには下のようなチェックリストもあるので、ぜひ参考にしてほしい。

萩原看護師は、運動をする際には以下の3点に気を付けてほしいという。

(1)身体を動かす時間はいきなり増やさないで、少しずつ増やそう。
(2)体調が悪い時は無理をしないようにしよう。
(3)病気や痛みがある時は医師や健康運動指導士の専門家に相談しよう。

これらに気をつけて今日からプラス10分の活動を心がけよう。

社会参加も健康長寿のための大切なポイント

萩原看護師が最後に上げた健康長寿ポイントは、「社会参加」だ。

平成29年版高齢社会白書によると、高齢者のグループ活動参加による効果としては次のようなものがあるという。

・新しい友人を得ることができた
・生活に充実感が生まれた
・健康や体力に自信がついた
・お互いに助け合うことができた
・地域社会に貢献できた
・技術・特技を生かすことができた
・社会への見方が広がった

「健康や体力に自信がついた」と答えた人は50%近くにまでのぼっており、社会参加が体力づくりに影響を与えていることがわかる。

栄養、運動、社会参加。この3つが健康長寿のキーワードと心得て、有意義な人生を送りたい。

昭和大学藤が丘病院リハビリテーションセンターの荻原木染看護師

◆取材講座:「生活の中での体力づくりとは?─活動を大切に─」(昭和大学公開講座/昭和大学藤が丘病院)

取材・文/土肥元子(まなナビ編集室)