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ランニングとウォーキング、認知症予防にいいのは?

Q 高速ランニングとウォーキング、認知症予防にいいのはどっち?

a:高速ランニング
b:ウォーキング
c:どちらもよい

認知症になりやすい人の、共通項のひとつが「運動不足」です。認知症予防に適度な運動は欠かせません。そこで「適度」とはどれぐらいかを、高速ランニングとウォーキングの違いでご説明しましょう。

最近、人気のランニング。個人差もありますが、ゴールに着く頃には息がハァハァと上がり、脈拍も早くなっていることが多いと思います。特に高速ランニングは体に無理がかかり、中高年には不適当です。これに対し、ウォーキングは息が上がるということはありませんね。30~40分も歩けば、少し疲れを感じる、というところでしょうか。この程度の「息があまり上がらない、ゆっくりした運動」が適度な運動と言えるでしょう。なので、「認知症予防に良いのはどれ?」への答えはb、ウォーキングです。

軽いサイクリング、ストレッチ体操などもちょうどいい運動です。ランニングでも、息が上がらない程度に走るゆっくりランニングならいいでしょう。これらを1回40~50分、行うと認知症予防の効果があります。

では、なぜ適度な運動が認知症予防に役立つのでしょうか?

認知症になりやすい危険因子として「高血圧」「糖尿病」「肥満」の3つがあげられますが、いずれもその原因に「運動不足」が関係しています。そのため、運動不足を解消することが危険因子を遠ざけることになり、認知症になるリスクを20~30%減らせるといわれています。

また、運動によって脳内ホルモンや神経伝達物質など、認知症予防に効果があると物質が増える可能性もあります。たとえば「アセチルコリン」という神経伝達物質があります。これは脳の記憶や学習能力に関係の深い「海馬」という部位の細胞を活発にする働きがあり、運動することで分泌量が増えると考えられています。運動不足の解消は認知症予防の大きな切り札といえるでしょう。

(ひとくちメモ) ◎どんな状態を認知症という?
認知症といってもさまざまな病気があり、アルツハイマー型認知症はそのひとつに過ぎません。認知症という病気は、「健常な成人になった人が病気や事故で脳を壊し、知的な能力の低下を招いて、一人で暮らしていくことが難しくなった状態」のことを指します。

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ