まなナビ

ボブ・ディラン、欧州映画、落語とかけまして...【PR】

柴野恭子センター長

日本有数のミッション系大学として知られる上智大学。その公開学習センターは、同大学創設時から受け継がれるカトリックの精神やその時々の時事性も取り入れた独自の講座を多数設けるなどの特色を持つ。センター長である柴野京子先生に、同大学における今年の春のおすすめの5つの講座を聞いた。

公開学習センター長、柴野京子先生

ボブ・ディランの歌詞から、アメリカ文化を読み解く

上智大学らしい、タイムリーなテーマ設定講座のひとつが5月11日から開始する「ボブ・ディランとアメリカ文化」。

「『風に吹かれて』『ライク・ア・ローリング・ストーン』などの名曲を生み、昨年ノーベル文学賞を受賞して、話題になったアメリカ人歌手・ボブ・ディラン。彼は日本でも人気が高い歌手ですが、実は彼の書く歌詞は、アメリカの歴史や伝統音楽などにも非常に深く紐づいており、それらの知識がないとなかなか読み解くのが難しいことでも知られています。

同講座では、わが校の英文科の教授が講師を担当し、ディランの音楽を聴いて、歌詞を読みながら、その歌の中に広がる世界観とアメリカ文化について、読み解きます」(柴野センター長、以下「」内同)

1960年代アメリカの社会運動の象徴であり、その後も大きな影響を与え続けているボブ・ディラン。講義を担当するのは、『ボブ・ディランの世界を読む』(NHK出版)などの著書を持つ、上智大学文学部英文科教授の飯野友幸先生。アメリカ文学の専門家による解説を聞きながら、ボブ・ディラン好きだけでなく、現代アメリカ社会についての造詣を深めたいという人にとっても必見だ。

「ボブ・ディランとアメリカ文化」の講師を務める飯野友幸先生

講座の詳細はこちらから:「ボブ・ディランとアメリカ文化

歩きながら瞑想する「ラビリンス・ウォーク」

キリスト教関連の講座が充実していることでも知られる上智大学公開学習センターで、二つ目におすすめの講座が5月13日からスタートする「シャルトル・ラビリンスを歩く ラビリンス・ウォーク~歩きながらの黙想」。「ラビリンス(迷宮)・ウォーク」とは、なかなか聞きなれない単語だが……

「『ラビリンス・ウォーク』とは、フランスのシャルトル大聖堂の中に造られたラビリンスのレプリカの上を、黙想したり祈ったりしながら歩く……というものです。ラビリンスを歩きながら瞑想することで、ストレスの軽減や精神統一に効果があるとされています。現在では、世界各地の教会や学校、病院、ホスピスなど、様々なところにラビリンスが設置され、取り入れるなど、セラピーやグリーフケアなどにも活用されています」

同講座では、神学部および実践宗教学研究科で教鞭をとっている山岡三治先生がコーディネーター・講師を担当。実際の講座内では、講義に加えて、ラビリンス・ウォークを体験できる。

キリスト教や瞑想、メンタルケアなどに興味がある人はもちろん、ストレスを抱える現代人にとっては、ぜひ受講してみたい講座のひとつと言えるかもしれない。

「ラビリンス・ウォーク~歩きながらの黙想」の講師を務める山岡三治先生

講座の詳細はこちらから:「シャルトル・ラビリンスを歩く ラビリンス・ウォーク~歩きながらの黙想

ファン垂涎! ヨーロッパ映画から、学ぶ

3つ目のおすすめ講座は、5月9日からスタートする「現代のヨーロッパ映画」。コーディネーターは、外国語学部ドイツ語学科教授のオピュルス鹿島 ライノルト先生だ。

ヨーロッパ映画は、ハリウッド超大作などとは一線を画し、大手シネコンなどでは上映されないケースが多い。隠れた秀作にフォーカスし、そこから各国の社会や歴史、文化を読み解いていくファン垂涎の講座だ。

「ヨーロッパ映画は、近年日本ではあまり上映されなくなってしまいました。講座内では、なかなか日本では見る機会のない、各国の秀作をピックアップし、それぞれの国を専門にしている教授陣たちが解説します。

昨今の移民問題などを筆頭に、民族的にも宗教的にも、そして政治体制においても、ヨーロッパは実に多彩な歴史を持っています。こうしたそれぞれの国が持つ多様性は、映画のなかにも表れています。そこで、ドイツ映画、スペイン映画、ロシア映画、イタリア映画、フランス映画などの各国の映画を通じて、ヨーロッパ社会について分析していきます」

以下の映画(予定)の他多数の話題作を取り上げます!

【ドイツ、オーストリアの映画】
 ヒトラーの贋札(2008年)
 白いリボン(2009年)
 ラブリー・リタ(2000年)
 インポート、エクスポート(2007年)

【ポルトガルの映画】
 Um Filme Falado (永遠の語らい、2003年)
 Montanha(日本未発表、2015年、タイトルの意味は「山」)
 Morrer como um homem (男として死ぬ、2009年)
 Cartas da guerra(日本未発表、2016年、タイトルの意味は「戦争からの手紙」)
 Viagem a Portugal(日本未発表、2011年、タイトルの意味は「ポルトガルへの旅」)

【スペインの映画】
 Volver(ボルベール(帰郷)、2006年)
 Los amantes pasajeros(アイム・ソー・エクサイテッド!、2013年)
 La mala educacion(バッド・エデュケーション、2004年)
 Tambien la lluvia(ザ・ウオーター・ウオー、2011年)
 Mar adentro(海を飛ぶ夢、2004年)

「現代のヨーロッパ映画」の講師を務めるオピュルス鹿島 ライノルト先生

講座の詳細はこちらから:「現代のヨーロッパ映画

セーフティネット縮小の中の「居場所」とは

4つ目のおすすめ講座が、「SDGs(持続可能な開発目標)-貧困・社会的排除と居場所論」。講師は、総合人間科学部教育学科教授の田中治彦先生だ。

「『SDGs』とは、2016年から2030年までに国連が掲げている『持続可能な開発目標』のこと。そのキーワードは『誰ひとり取り残さない』というものです。これは、今後の社会では世界中の貧困にあえぐ人々や社会的に排除されている人々に、居場所を作っていくことが大切になる……とも読み解くことができます。

日本においても、セーフティネットが縮小し、その結果、お年寄りや不登校児や貧困、女性や障害を持った人々などに対するケアが問題になっています。それぞれの人々に対して、社会はどういう居場所を作っていくべきなのか。また、その実態を通じて、私たちにできることは何かを考えていく講座になると思います」

「貧困・社会的排除と居場所論」の講師を務める田中治彦先生

講座の詳細はこちらから:「SDGs(持続可能な開発目標)-貧困・社会的排除と居場所論

落語にゆかりのある講師陣が集まりまして...

そして、最後におすすめの公開講座が、落語を多角的な視点から読み解く「落語とかけまして...(実演付)」。

「この講義では私自身がコーディネーターを務めています。大学では「大衆文化論」という授業の中で日本の演芸について講義していますが、落語は時間が長いこともあって取り扱うのが難しいため、今回落語に焦点をあて、大学ならではのアプローチで公開講座を企画しました。

同講座では、バックグラウンドの違う4人の講師陣が登場し、様々な見地から落語文化への知識を深めていくという内容になっている。

「たとえば、落語協会の真打である金原亭龍馬師匠には、実演に加えて、落語の中に出てくるものごとや落語家の修行など、入門編的に落語についてお話をしていただきます。

また、英語と国際文化の専門家である鹿鳴家英楽(かなりや・えいらく)先生には、英語落語の視点からの講義を。さらに、落語にはおっちょこちょいやあわて者など、実に多彩な性格の持ち主が登場し、不条理ともいえる設定を生きるのですが、『落語の国の精神分析』という著作もある総合人間科学部心理学科教授で精神分析家の藤山直樹先生が、こうした落語の世界を精神分析の視点から解説していきます。

最後は哲学者である吉田先生が、哲学と落語の関わりや落語世界にある思想を分析する予定です」

日本の古典芸能として知られる落語の入門編として講座に通うのもよし。また、落語好きな人が、落語の魅力を新たに掘り下げるきっかけとしても、楽しめそうだ。

「落語とかけまして...」の講師を務める藤山直樹先生

講座の詳細はこちらから:「落語とかけまして...(実演付)

 

これら5つの講座は、専門性が高そうに見えるが、どの講座も初心者が受けても問題がないように構成される。普通の公開講座ではお目にかかれないような、独特な講座ばかりなのも、注目だ。

〔今日の名言〕「上智大学の教養講座は、大学の教員が企画し、コーデイネートしている」

〔大学のココイチ〕上智大学を最初につくったのは、ドイツ人、フランス人、イギリス人の3人のイエズス会の神父たち。学内にはクルトゥルハイムと呼ばれる聖堂があり、ミサはもちろん、卒業生の結婚式などにも使われています。

2017年4月14日取材

文/藤村はるな 写真/藤村はるな、上智大学