2016年6月。ひょんなことからパナマ人達総勢11名と同じ部屋の下、3ヵ月程生活を共にすることとなった。
なぜパナマ人と暮らすことになったのか、どういう繋がりなのか、詳しい話をすると今月のテーマである「語学を学んで」が「パナマ人と暮らして」になってしまう恐れがある為割愛させていただくが、今まで生きてきた中で一番刺激的なひと夏の3ヵ月間だった。
パナマの公用語はスペイン語だ。皆さんもアミーゴ(友達の意味)ぐらいはなんとなく聞いたことがあるだろうか。ちなみにこの時の私の語学力は英語の義務教育のみで、なんとか大学の必須英語を単位を落とさず卒業できたというレベルである。スペイン語の会話を聞くのも人生初体験であった。
まず最初の1ヵ月でとにかく使いに使った言葉は、「オラ!」と「ムイビエン」である。
「オラ!」は日本語で書いてしまうとどこかの怖いお兄さんの発した言葉のようだが、スペイン語ではいつでもどこでもどんな時でも使える挨拶である。「ムイビエン」の方は聞いたことのない人もおられると思うが、一言で言うと「いい感じだよ!」ということである。「元気?」と聞かれた際にも「ムイビエン」と返答できるし、ご飯が美味しい時にも「ムイビエン!」で通じる。何を聞かれているか分からないけれどとにかく何か答えないといけない雰囲気の時にも「ムイビエン」で乗り切れる。こんなに有り難い言葉はない。日本にいながら日本語が通じない中で、苦難の1ヵ月を乗り越えられたのは「オラ!」と「ムイビエン」というポジティブな単語のおかげである。
2ヵ月に入るとボディランゲージでなんとなく何を言っているのかが分かるようになった。例えば「暑い」「寒い」「眠い」などだ 海外の人は日本人よりも感情をはっきりと言葉にするイメージがあるが、それは当たっていると思う。面白いことに、理解できる単語やなんとなくこう言っているんだろうなということが分かってくると返答をしたくなる。
しかしいざ返答をしようにもスペイン語が全くでてこない。悲しいかなこれが現実である。
3ヵ月目のある日、つわりに苦しんでいるパナマ人の妊婦さんの背中をさすってあげていた日があった。そんな彼女を見てスペイン語で何か言ってあげたいのに一つの単語すら出てこない。彼女は私に「アリガトー」と何度も言ってくれたのに、である。言葉が届く安心感と言葉が届かない歯がゆさを身を以って教えてくれたのは、この子だ。
現在私は、スペイン語を習っている。はっきり言って3歩進んで3歩下がるような歩みではあるが、少しずつ覚えていく単語や文法の意味が理解できると嬉しくなる。勉強して改めて思うのは、スペイン語はロマンのある言語だということである。あの日パナマの妊婦さんに言えなかったスペイン語を、弟のお嫁さんになる予定であるコロンビア人の彼女に言えるよう、日々努力していきたい。ちなみにコロンビアの公用語は、スペイン語である。
スペイン語を、学ぶ
たこさん(33歳)/大阪府/最近ハマっていること:胎教