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アルツハイマー。病変が出てから気づくまでに何年?

Q アルツハイマー型の認知症の病変が出始めてから、「アルツハイマー型認知症」と気づくまでに、一般的に何年ぐらいかかるでしょう?

A 5年
B 10年
C 20年以上

どんな病気でもそうですが、いきなり病気になるわけではありません。まずその兆候である症状が出て、それが少しずつ進行し、「病気」と認識されることが多いでしょう。認知症もそうです。アルツハイマー型認知症の場合、そうと気づくまでには病変が出始めてから20年以上かかります。答えはCです。

20年以上経って「認知症」と気づいた場合、それはすでにかなり進行した状態になっています。そのため、本人が「私は認知症ではないか」と気づくのではなく、家族など周りの人の方が「これは認知症ではないか」と気づき、本人を病院に連れて行って診断されるというケースが多くなります。この状態では治療はおろか、進行を遅らせる処置をとることも難しくなります。ですから早めの発見が必要なのです。

認知症は脳が変質し、認知機能が低下していく病気です。中核症状は、忘れっぽくなる「記憶障害」、今自分がいる場所や今日が何日かなど自分のいる状況がわからなくなる「見当識障害」、そして判断力や遂行機能の低下などです。

認知症の多くは65歳以上で発症します。20年以上前から病変が出ていたとすると、多くが40代でMCI(軽度認知障害)になっていたと考えられます。

MCIの段階では、もの忘れをしても「もう歳だから、忘れっぽくなるのは仕方ない」と加齢のせいにしてやり過ごしてしまうことが多いのです。

MCIは徐々に進行します。それに伴い、行動や心理状況に変調が現れます。典型的な症状は、眠れなくなる、うつ状態、強い不安、アルコール依存などです。過食や徘徊、妄想、幻覚、暴言や暴力なども、症状の進行するにつれて現れる症状です。

これら周りの人の目に見える症状が出てきて初めて「認知症」に気づく……。加齢によるもの忘れと、MCIによるもの忘れは性質が違います。認知症にならないためには、MCIによるもの忘れを見逃さないことが重要です。

認知機能の低下が見られるものの病的ではない、グレーゾーンの状態であるMCI。認知症は防げないといわれてきましたが、MCIの段階で正しく対処すれば、認知症へ進行するのを防げる可能性があります。

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■監修■朝田隆(東京医科歯科大学脳統合機能研究センター認知症研究部門特任教授/メモリークリニックお茶の水理事長)
あさだ・たかし 1955年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科精神科、山梨医科大精神神経科、国立精神神経センター武蔵野病院精神科、筑波大学精神医学教授などを経て現職。認知症の早期診断法や予防、リハビリに携わり、MCIの啓蒙活動を積極的に行っている。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ