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たった3種類の語基のルールで韓国語は理解でき、表現できる 

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『冬のソナタ』で韓流ドラマにハマった人や、東方神起からK-POP漬けになった人。食や美容が好きで韓国に何度も旅行する人。多くの受講者は「早く会話ができるようになりたい」と羅仁淑(ら いんすく)先生の門を叩く。しかし「暗記だけでは限界がきます」と先生はピシャリ。そしてあまり知られていない、だが驚くほどわかりやすい文法を教えてくれるのだ。

韓国人が知らない、語基を用いた学習法

羅先生が来日したのは、1982年。早稲田大学政経学部に留学するためだった。当時は日韓間の往き来にもビザが必要で、親族まですべて思想を調べられ、反日教育を受けないとパスポートが取得できないという、“近くて遠い”時代。

しかしそんな中で来日した日本で、外国人の自分でも医療保険を受けられるという社会福祉制度に感銘を受ける。そしてまだ韓国に定着していなかった社会保障制度を専門的に学び韓国が福祉国家になるのに役立ちたいと修士課程、博士課程へと進んだ。

「ドクター3年生の時、国士舘大学の政経学部に、非常勤講師として誘いを受けたのがきっかけで教壇に立ち始めました。その後、生涯学習センターが新設され、韓国語の講座も受け持ってもらえないかといわれて、韓国語も教えるようになったんです。

でも、もともと専門は経済でしたから、どうしたらわかりやすく韓国語を教えられるかと思っていました。その時でした。日本語の語尾活用に似ている、『語基』(単語の語尾などを取り除いた部分)に着目した学習法を知ったのです。日本で生まれた文法理論で韓国人には知られていないけれど、私から考案者に賞を差し上げたいくらいすばらしいものなんです」(羅先生)

日本語の場合、たとえば「行く」という動詞なら、「行」は言葉の意味を持つ部分で語幹と言い固定され、表現を表す部分である語尾は「く」を基本に、「きます」「かない」「けば」「くとき」など活用形は6種類に及ぶ。また、動詞と形容詞では形と活用ルールが異なる。さらに不規則活用や例外が多く、外国人が習得するには非常に難しいといわれる。

「ですが、韓国語の場合は非常にシンプル。語基は3種類しかありません。3つの語基さえ覚えれば、初めて聞いた単語でも言いたい表現にすぐ言い換えられるんです。また、動詞と形容詞の形が同じで活用ルールも同じです。ハングル(朝鮮語を表す表音文字)も読むのは簡単です」(羅先生)

パズル感覚だから脳トレに

春期講座前のタイミングだったので、無料の体験講座に記者も出席させてもらった。すると、初めてハングルを書くという60代の女性、70代の男性でも、子音と母音を組み合わせるルールを習っただけで、スルスルっと自分の名前をハングルで書けるようになっていく。

「面白いですよ、組み合わせていくだけだから。ある生徒さんから『語学をやっているというより、数学をやっているみたいだ』っていわれました。『パズルを解いてるみたい』っていう人もいましたね」(羅先生)

1年で教える立場になった人も

韓国の大人気ドラマ『冬のソナタ』にハマり、60才を過ぎて入門から始めた、斉須寿恵子さんは、ハングルの書き方もわからなかったところから、1年で初級&中級を修了した。そして「先生の教え方が間違ってなかったと、私が証明します」と宣言し、自ら区の施設を借りて上級クラスの補講をするまでになった(現在は教えていない)。斉須さんはいう。

「習って間もない頃でした。ニュースでたまたま流れていた韓国語が、“全部わかるわ”って驚いちゃって。うれしいし、やる気になるじゃないですか。気づいたら韓国語の響きに惚れ込んじゃいましてね。それからは、10分とか30分とか、時間的には短いけれど、とにかく毎日、復習し続けたんです」

東京五輪での韓国語ボランティアをめざす斉須さんは、今でもたまに韓国語を勉強し始めた頃の羅先生のプリントを読み返すことがあると笑った。

言葉を習うこと自体が国際交流

「文法は習いたくない、早く会話を教えてくださいという生徒さんもいらっしゃいます。でも会話表現だけ丸暗記していると、応用がきかないんですよね」

冬ソナのヨン様(ペ・ヨンジュン)に手紙を書きたい人も、東方神起と話せるようになるのが夢だという人も、この文法理論を学ぶのが近道だと羅先生はいう。

「じゃないと『私は昨日新宿に行きたい』みたいな片言の韓国語をずっというはめになる。でも、ルールさえ覚えれば『私は先月あなたに会いたくてソウルに行ったけど』というような微妙な表現もすぐいえるようになります。文法を知る方が、会話をするうえでも絶対に近道だと、今は確信を持っています」(羅先生)

入門はハングルの読み方や書き方などから始まる、超初心者向けの内容。初級&中級になると、作文の練習もスタートする。辞書を片手に独学できるようになるのが最終目標だ。

「宿題は出しません。家で一度もノート開かなかった、という生徒さんもいますけど、それでも大丈夫です(笑)。言葉っていうのは文化じゃないですか。言葉を知りたいという気持ち自体が、国際交流になっていると思うんです」(羅先生)

◆取材講座:「韓国語会話(入門)」、「韓国語会話(初級&中級)」(国士舘大学 世田谷キャンパス)

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取材・文/まなナビ編集室