まなナビ

あ、アルツハイマー?親指と中指で今すぐチェック

Q 次のうち、脳を鍛えるのに効果的なものはどれ?

A 異なる2つの動きを同時に行う
B 同じことを10回以上、正確に繰り返す
C 「数独」のような数字パズルを長時間解く

認知症予防に有効なトレーニングとして、2つのことを同時に行う「デュアルタスク」があげられます。たとえば、料理しながら人と話をする、テレビを見ながら編み物をする、洗濯物をたたむ……などです。答えはAです。

デュアルタスクの中でも特に「頭を使いながら体を動かす」ことが脳の活性化に役立つと言われています。先述の料理しながら話す、テレビを見ながら編み物もそうです。こうした家事が認知症予防になります。また、電話しながらメモを取ったり、人と話しながら歩いたり、歩きながら頭の中で仕事の段取りを考えたりするのも、頭と体を同時に使うデュアルタスクです。

次のイラストは、だれでもすぐにできるデュアルタスクです。

(1) 数を数えながら足踏みをする。
(2) 3の倍数と末尾に3がつく数字の時に手を叩く。

これは家の中でもできますし、ウォーキングしながらでもできます。

もうひとつ、脳を広範囲にわたって刺激する指の運動をご紹介しましょう。

(1) 左右の手の指先を合わせる。
(2) 左右の手の同じ指を、互いの指に触れないようにしながらぐるぐる回す。内回し、外回しと、逆の方向にも回す。

手の指の動きは、脳機能を広範囲にわたって刺激します。初めは左右の手の指を1本ずつ、計2本の指を同時に動かしてみましょう。それができるようになったら次は2本ずつ、合計4本の指を動かします。それができるようなったら、「親指と中指」「人差し指と薬指」など、離れた指を4本、同時に動かします。ここまでくると、かなりむずかしいですよ。

ふだんからこの運動を行っていると、認知機能が低下してきたとき、「あ、おかしいな、アルツハイマーかな?」といったふうにすぐ気づくことができます。脳トレはMCIの早期発見にも役立ちます。

そしてもし、MCIかな? と思ったら、適切な対応を取ることが大事です。脳トレだけで解決しようとせず、早めに病院で診察を受けるようにしてください。

認知機能の低下が見られるものの病的ではない、グレーゾーンの状態であるMCI。認知症は防げないといわれてきましたが、MCIの段階で正しく対処すれば、認知症へ進行するのを防げる可能性があります。当シリーズではMCIを見逃さないための知識、認知症の予防策をご紹介していきます。

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■監修■朝田隆(東京医科歯科大学脳統合機能研究センター認知症研究部門特任教授/メモリークリニックお茶の水理事長)
あさだ・たかし 1955年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科精神科、山梨医科大精神神経科、国立精神神経センター武蔵野病院精神科、筑波大学精神医学教授などを経て現職。認知症の早期診断法や予防、リハビリに携わり、MCIの啓蒙活動を積極的に行っている。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ