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【眞子さまご婚約へ】結婚に際し支給される一時金は?

皇居正門から長和殿へ向かう道にある濠にかかる通称「二重橋」

上空から見た皇居

今週、秋篠宮家長女の眞子さまがご婚約されるというニュースが列島をかけめぐった。皇室に関する法律である『皇室典範』は、女性皇族がご結婚をされると、皇籍を離脱すると定めている。皇籍を離脱するとはどういうことなのだろうか。

「臣籍降下」から「皇籍離脱へ」

『皇室典範』第12条には「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」とあり、女性皇族は皇族の身分を保持したまま結婚することはできない。

いまの『皇室典範』は昭和22年に制定されたものだが、それ以前の明治時代に制定された旧『皇室典範』でも同様であった。皇室の歴史にくわしい小田部雄次静岡福祉大学教授によれば、戦前は身分制度があり、天皇や皇族以外の一般民は「臣民」と呼ばれ、そのため皇族が一般民になることを「臣籍降下」と称したが、戦後は身分制度がなくなり「臣民」という言葉も消え、「皇籍離脱」とあらわすようになったという。

また、戦前に「臣籍降下」するのは、結婚した女性皇族のみではなかったという。当時は宮家が多く存在していた。明治天皇の直系男子ではない宮家では、男性皇族であっても宮家当主以外は成人すると「臣籍降下」したという。また、宮家当主も、幕末の伏見宮邦家親王(ふしみのみやくにいえしんのう)の五世以下はみな「臣籍降下」することになっていて、敗戦後の15宮家の皇籍離脱がなくても、旧宮家は自然消滅する運命にあった。

戸籍、選挙権、姓がもらえる

皇族はわたしたちと同じような戸籍は持っていない。“皇統譜”という皇族専用の戸籍に、血縁関係が記されるのである。そのため女性皇族が結婚して皇籍から離れると、戸籍がもらえる

また、選挙権・被選挙権は、日本の戸籍を有している人にしか与えられないため、皇族には権利がないが、戸籍に名が載ると、選挙権・被選挙権を得ることになる。

もうひとつ、結婚すると“姓”がつく。では今まで「秋篠宮」と呼ばれていたのは姓ではなかったのだろうか。

じつは「秋篠宮」というのは宮号(みやごう)という宮家の当主である皇族男子に与えられる称号であり、姓ではない。“姓”というのは古代から、天皇から臣下に与えられるものだったからだ。戦前の旧宮家は、戦後に皇籍離脱した際に東久邇(ひがしくに)、朝香、北白川などの宮号をそのまま姓にしたという。

昭和22年には当時の金額で総額5000万も

ネットをかけ巡っている話題がもうひとつある。皇籍離脱一時金だ。

これは、『皇室経済法』の規定によって決まり、その額は首相ら8人の議員で構成される「皇室経済会議」で審議されるという。

ちなみに、平成17年(2005)に結婚された黒田清子さんの場合は約1億5000万円、平成26年(2014)に結婚された高円宮家(たかまどのみや)から嫁いだ千家典子さんの場合は約1億円だったとされる。

これについて小田部先生はくわしく語る。

「『皇室経済法』第6条第5項の6に「皇族が初めて独立の生計を営む際に支出する一時金額による皇族費は、独立の生計を営む皇族について算出する年額の二倍に相当する額の金額とする」、第6条第5項の7には、婚姻で「皇族の身分を離れる者については、独立の生計を営む皇族について算出する年額の十倍に相当する額」とあります。内親王(ないしんのう、天皇の直系で二親等以内の皇族女子の称号)であった黒田清子さんは、女性なので、“独立の生計を営む” つまり当主がもらう3050万円の半額である1525万円の10倍となる1億5250万円、千家典子さんは内親王ではなく女王(じょおう、天皇の嫡男系嫡出で二親等以遠の皇族女子の称号)なのでその10分の7である1億675万円となりました。

今回の眞子さまは内親王なので、黒田清子さんと同じ額になると思います。

なお、昭和22年(1947)の旧宮家の皇籍離脱に際しては、当主である王は210万円、親王妃と内親王が150万円、王妃が105万円の一時金を得ました。この結果、久邇宮(くにのみや)家は約950万円、賀陽宮(かやのみや)家は約830万円が割り当てられ、総額約5千万円の予算が組まれました。

これがどれほどの規模であったかは、当時の総理大臣の月給が、昭和21年で3千円、昭和23年で2万5千円といわれることからもわかるでしょう」

■監修■小田部雄次
おたべ・ゆうじ 静岡福祉大学教授。1952年生れ。近現代の皇室制度・華族制度研究の第一人者。著書に『梨本宮伊都子妃の日記』『ミカドと女官』『家宝の行方』『華族家の女性たち』『李方子』『天皇・皇室を知る辞典』『皇族に嫁いだ女性たち』『昭憲皇太后と貞明皇后』『昭和天皇と弟宮』『日本歴史 私の最新講義 近現代の皇室と皇族』『昭和天皇実録評解』(1,2)『大元帥と皇族軍人』(明治編,大正・昭和編)『49人の皇族軍人』『肖像で見る歴代天皇125代』ほか多数。

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文/まなナビ編集部 写真/SVD