まなナビ

【まなナビ】でマニアックで地味な学びとの出会いを

京都造形芸術大学副学長・創造学習センター長の本間正人先生

「人間はいくつになっても学べるし、学びつづけることが大切だ」と、コーチングの第一人者・本間正人先生(京都造形芸術大学副学長・創造学習センター長)は語る。本間先生が【まなナビ】の存在意義について、エールをこめて語る。

検索しても出てこないものは “ない”

──大学の講座を取材していると、こんなものが開催されていたならもっと早く行きたかったと思うことばかりです。先生の京都造形芸術大学でも、『日本芸能史』の前期14回シリーズがスタートしましたね。

前期は「相撲と芸能」をテーマに、比較芸能史研究者、落語家、狂言師など、さまざまな分野でご活躍の方々にお集まりいただいて14回の講座を開催します。この【まなナビ】にインタビューで登場している脚本家の内館牧子さん(内館牧子さんインタビュー「日常から離れた講座を」)も、5月に「相撲の伝統」というテーマで登壇されますし、7月には壬生(みぶ)大念佛狂言の講座もあります。例年、多くの方に来ていただいています。

──東京からでも行きたいという人は、たくさんいると思います。でもそういった情報がなかなかネットで探せないのが残念です。

学びたい人は世の中にたくさんいます。学ぶことでキャリアチェンジなど別の可能性を探したい人もいるし、趣味を同じくする仲間がほしいという人もいるし、とりあえず何かを始めたいという人もいる。しかし、何を、どう、どこで、学べばいいのかという情報が足りないのです。

ネットで検索しても、なかなかヒットしない。検索しても出てこないものは、“ない”とされてしまう時代ですから、魅力的な講座があっても、それを探している人のもとにその情報が届かないのです。

あのキュレーション・サイト問題のように

──これだけ情報があふれていても、探しているものが見つからないとは、なんとも皮肉な話ですが……

インターネットの情報には多くの利点があるけれども、いっぽう問題もある。ひとつは、世界を揺るがす大事件も、コンビニのバイトが食材ケースの中に入ってTwitterに上げたというような出来事も、全部一緒くた。時に不心得バイト事件のほうが耳目を集めることもある。また、視聴率を取りたいテレビがそれを報道する。それをまたネットが取り上げる。こうして、人がそれを求める求めないにかかわらず、“面白そうなニュース” がほかのものを駆逐していく。

そしてもう一つの問題は、昨年秋に話題になった、あのキュレーション・サイト問題のように、検索エンジンの検索順位が、検索エンジンの裏をかいてアクセス数を稼いだり広告費などをかけることによって左右されること。だから情報の質も量もバラバラで、そのかたわら、さまざまな情報が  “誰にも知られないまま”  埋もれていくのです。インターネットは、情報の大海から求めるものをピンポイントで探し出せることが最大の利点だったにもかかわらず、今は探せない状態になってしまっています。

──そのために登場したのがキュレーション・サイトだったはずです。

キュレーションという言葉は、博物館などの管理者をさす「Curator(キュレーター)」から来ています。展示品の取集や展覧会の企画・運営・管理をする人をさします。そこから、インターネット上の情報を収集してまとめ直し、新しい価値を生み出すことを、キュレーションと呼ぶようになりました。

つまり、本来のキュレーションは、情報の目利きの人が、いい情報とそうでないのを選別して、その質の高い情報を選別することです。この【まなナビ】も、人間にとっていちばん根本的な営みである「学び」に関する情報を、一定のフィルターを通すことによって、良質な情報を選別して伝えるサイトとして成長してもらいたい。また、もうひとつ、大切なポイントを忘れないでもらいたい。

──学び情報サイトとして、大事なポイントとは?

人は、ひとりひとり興味や関心が違うのです。けっして皆が皆、メジャーなものに興味があるわけではありません。マニアックだったり、地味だけど面白い学びは、世の中にいっぱい存在するし、そこに惹かれる人もいる。でもそこにはなかなか光が当たらない。

しかし、この【まなナビ】で検索すれば、狭いかもしれないけど、びっくりするほど深くて面白いことを学ぶチャンスと出会うことができる。僕はそれは、非常に有意義なことだと思います。

仏像の足の裏について学ぶような「はぁ?」という講座を

ネット販売には、ロングテールというビジネスモデルがあります。販売機会の少ない商品をたくさん取りそろえ、全体としての売上を上げる手法です。Amazonでは、年間300冊しか売れないような本も、年間10万部以上売れる本も、同じように検索できるし、買うことができる。

公開講座も同じ。たとえば仏像の足の裏について学ぶとか、多くの人には「はぁ?」という内容の講座でも、こうしたサイト上に情報が存在していれば、絶対に出会いがある。

──今回、思いもかけない講座に出会うきっかけになるかなと、ジャンル別のタブも10個設けました。

ジャンルタブをクリックしてタイトルを見ているだけでもワクワクしてきますね。世の中には、自分の知らないことがこんなにあるんだとわかる。知らないことだらけなんですよ、世の中は。その「知らないこと」がデータベースとなっていることが、とても楽しい。

僕はこの【まなナビ】が、本当にマニアックな、狭いかもしれないけれど深い学びの情報──今まで影に隠れていた情報に、光を当てる力を持っていると思います。

 

2017年3月6日取材

取材/和久井香菜子 写真/本間正人先生