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テリー伊藤、巨泉に呼び捨てられる たけしの嬉しさ実感

現在、慶應義塾大学院生として、SFCキャンパスで心理学を学んでいる、演出家でタレントのテリー伊藤(67才)。退学の危機を乗り越え、無事に大学院の授業もスタートした。しかし担当教授に挨拶に行くと、いきなりそっけなく「来月、研究発表だから」と言い渡されてしまう。「こういう体験こそがうれしい」と目を輝かせるテリー伊藤にその理由を聞いた。

テリーさんとか伊藤さんとかしか言われない

「担当の先生がね、クールなんですよ。ぼくが『先生無理ですよ、できないですよ』っていくら泣きついても、『できるから』『やって当たり前だから』ってそっけないの。『大学院に来るくらいなんだから、何か発表する気があって来てるんでしょ』って。パソコンがうまく使えないなら、紙芝居でもいいからって。しかも、『11月15日にやったら、次は12月ですから』って、2回目がすぐ来るの。容赦ないんだよね(笑い)。

呼び捨てにされなくなると人は年を取るというけど、今はもう、ぼくもテリーさんとか伊藤さんとかしか言われない。それって、どこか寂しい部分もある。呼び捨てにされるのってうれしいことなんですよ。(大橋)巨泉さんが(ビート)たけしさんのことをたけしって呼んでましたよね。それはちょっとうれしいことだったと思う。でも巨泉さん亡き後、いまや芸能界でたけしさんのことをたけしって呼ぶ人はいないじゃないですか。それと同じで、先生から冷たい感じで言われて、ぼくが『え!』って焦る、この一連のやりとりが妙におかしくて、うれしいの」

好きな女の子に振り回されている感じ

先日は、アンドレ・ジッド(フランスのノーベル文学賞受賞作家)の『狭き門』と厚さ3cmくらいの『ジッドの日記』を出され、再びそっけなく「これ読んで、感想聞かせて」と言われたという。

「2冊買って読み始めてるんですけど、こういう“振り回されている感じ”がすごくいいんですよね(笑い)。恋愛みたいじゃないですか。好きな女の子から『私、この詩が好きなの、読んでみて』って詩集を渡されたら、自分では買わないし読みたくないけど、彼女はどんな感性してるのかなって思って読んだりする。小難しそうだとかつまらないとか思うより前に、とりあえず読んでみようって」

サンジャポの後5時間、研究資料を

大学院生になって一番面白かったことを尋ねると、「これまでにない自分を見つけられたこと」ときっぱり。

「昨日もサンジャポ(テリーがレギュラー出演しているTBS系『サンデー・ジャポン』)の後、5時間くらいPCとにらめっこしながら研究資料を作っていたんです。これまでなら、その時間は洋服屋さんに行ったり、スポーツやったりしてたんですよ。でもそれをやらないでPCにかじりついている自分って新しいなあって思って。だってこの年になって宿題を出されて、それをブツブツ言いながらやっている。さらに11月15日は何をどう発表しようかって、2週間は気が重い。そういうこと全部が今までのぼくにはなかったライフスタイル。だから面白いんですよ。

ほかに人生で面白いのは何だろうって考えてみても、うまい料理を食べに行くのもいいだろうけど、おれはそんなにグルメじゃないし。家で映画見るのも好きだけど、それも何十年もずっと見てきてもういいかなってなっているし。今は、面白いのはそうやってままならないものに翻弄されることなんですよね」

8割が“本当にうらやましい”

先日の衆院選では、ポピュリズム(大衆迎合主義)や衆愚政治という言葉がひとつのキーワードとなっていた。勉強しない・考えない人が多くいる一方で、学ぶことを面白がる人々もいる。

「この間クラス会があって、20人くらい集まったんですけど、彼らに大学院の話をしたら、2割は“お前大変だぞ”って言うけれど、あとの8割が“いいなあ”“本当にうらやましい”と言うんです。やっぱりみんな学びたい欲を持っているんですよね。
もっというと、今学ばないという人でも、心の中では学ぶ方がいいと思ってるんじゃないかな。そこに行かないだけで。だって何も考えない人と会って話したらそれでおしまいだけど、勉強している人と会うとすごいなって思うし、そこから発展するじゃないですか。そういう差は出てくると思いますよ。勉強すると、自分に自信がつく。たとえばスポーツをやってる人が、あんなに苦しい練習や試合をしてきたんだから、その後の人生の試練にも耐えられるとかいうように、勉強をやっていれば、これから生きていくうえで、何かに耐えられる力がつくかもしれないんじゃないかな」

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取材・文/辻本幸路(まなナビ編集室) 撮影/渡邉茂樹