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「この薬はグレープフルーツジュースと一緒に飲まないで」のワケは?

「この薬はグレープフルーツジュースと一緒に飲まないでください」そう薬局で言われた人もいることだろう。帝京大学総合博物館で開催された講座「大学教授が教える!知って得するお薬と健康の話」で、帝京大学薬学部教授の丸山一雄先生は、グレープフルーツに含まれるある成分が、人の体のもつ防御機能を阻害する、と説明した。

アミノ酸やグルコースは吸収されるが

薬は胃で溶け、小腸に入り、胃や小腸で吸収されて血管に入り、全身に行き渡る(薬が体に入るシステムについては前の記事「絶対に噛み砕いてはいけない薬も。大学教授の薬講座」を参照)。丸山先生によれば、ヒトの腸の表面積はテニスコート1面くらいあり、そこから食べたものの栄養成分が吸収されるという。肉はアミノ酸まで分解され、ご飯はグルコース(ブドウ糖)にまで分解されて吸収される。しかし薬は栄養分ではなく異物である。そのため、わざと吸収しないシステムも備わっているという。丸山先生は次のように説明する。

「栄養分ではない異物が入ってきたとき、ポイっと吐き出すような防御機能も腸管には備わっているんです。せっかく入ってきた薬を追い出すんですね。その働きをするのがP-糖タンパク質と呼ばれるたんぱく質です。P-糖タンパク質は小腸の細胞膜上にいて、全ての薬物ではありませんが一部の薬物を細胞外に排出します。また、腸管や肝臓、その他の臓器にはCYP3A4(シップ3A4)という、異物を代謝する働きを担う酵素もいて、薬の投与量は、これらの効果を計算して決められています。不思議なことにCYP3A4で代謝される薬物の多くがこのP-糖タンパク質によって排出されることが分かっています」(丸山先生。以下「 」内同)

文旦、スウィーティーにも要注意

「ところがグレープフルーツジュースにP-糖タンパク質の機能を低下させる作用があるのと、含まれているフラノクマリン誘導体がCYP3A4を不活性化させてしまいます。その結果、薬が吸収されすぎてしまい、薬の血中濃度が予想されたものより上がってしまいます。

薬の血中濃度が高くなると、薬が効きすぎたり、思わぬ副作用が出てくることがあります。よくグレープフルーツジュースと一緒に飲まないでください、と言われる薬の代表的なものとしては、高脂血症の薬、高血圧や狭心症の薬などです。花粉症などのアレルギー薬アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)は、グレープフルーツジュースと一緒に飲むと別の作用で吸収が低下し、薬効が逆に減弱します」

調べてみると、フラノクマリンが含まれる柑橘類には、文旦、スウィーティー、ハッサク、夏みかん、ダイダイなどが該当するようだ。一方、同じ柑橘類でもレモンやオレンジには含まれていないらしい。ただ柑橘類は交配でどんどん新しい種類が出てきているので、当該する薬を飲んでいる人は注意が必要だ。

◆取材講座:薬学部40周年記念連続講座「大学教授が教える!知って得するお薬と健康の話」第3回「薬に技あり!秘められた製剤技術の紹介」(帝京大学総合博物館)

文・写真/まなナビ編集室 写真/(c)hoto@n / fotolia