30代から発症するリウマチ、大きく変わったその診断方法とは

30代から50代で多く発症し、長い年月をかけて関節が破壊されて手足の指などの関節が変形し、日常生活にも支障をきたすようになる、それが関節リウマチだ。このリウマチの診断方法が近年、大きく変わったという。横浜市立大学医学郡附属市民総合医療センターによる市民公開講座「関節リウマチの最新の薬物治療と手術療法」で、リウマチ膠原病センター准教授の持田勇一先生は「より早期に診断し治療を開始するように大きく変わってきた」という。その詳しい内容とは。

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30代から50代で多く発症し、長い年月をかけて関節が破壊されて手足の指などの関節が変形し、日常生活にも支障をきたすようになる、それが関節リウマチだ。このリウマチの診断方法が近年、大きく変わったという。横浜市立大学医学郡附属市民総合医療センターによる市民公開講座「関節リウマチの最新の薬物治療と手術療法」で、リウマチ膠原病センター准教授の持田勇一先生は「より早期に診断し治療を開始するように大きく変わってきた」という。その詳しい内容とは。

ルノワールも発症した関節リウマチ

関節リウマチとは、関節に炎症が起きて、痛みや変形が生じるものだ。原因は明らかではないが、何らかの感染などをきっかけに免疫の異常が起こり、関節を包む滑膜(かつまく)に炎症が起こり、関節を保護している軟骨や組織を攻撃してしまうものだ。

その結果、手や足の関節が長年かけて徐々に変形していき、日常生活にも支障をきたしたりするようになる。フランスの印象派の画家ルノワール(1841-1919年)も40代後半にリウマチを発症し、晩年はねじ曲がった手指に絵筆を結わえて絵を描いていたと知られている。

このリウマチの診断が大きく変わった。持田先生によれば、それはリウマチ診療における大変革ともいえるものだという。

早期診断、早期治療開始に

近年まで関節リウマチは以下の7つの分類基準うち4つ以上を満たすものとされてきた。

1) 朝のこわばりが6週間以上持続する。
2) 3つ以上の関節域(手、肘、膝、足)の関節炎が6週間以上持続する。
3) 手の関節(手関節・指関節)の関節炎が6週間以上持続する。
4) 対称性関節炎(両方の手首が腫れるなど)が6週間以上持続する。
5) リウマトイド結節(皮膚の下に結節ができる)。
6) 血清リウマトイド因子(RF)陽性(採血で因子が陽性)。
7) 手指と手関節のX線写真で骨びらんや骨粗しょう症が見られるかどうか。

つまり、仮に5・6・7の基準を満たしていて、なおかつ手指などにこわばりや腫れがあったとしても、発症から6週間経たないと関節リウマチだと分類されなかったのだ。これは長い間、関節リウマチは炎症が起きてから長い年月かけて関節破壊が進むのだと考えられてきたことによる。

しかし近年、じつは炎症が起きてから2、3年で関節破壊にまで進むことがレントゲンで明らかになってきた。そのため最近の基準では、どこかの関節の1つ以上に腫れがあれば、リウマチかどうかを診断し、リウマチと診断されたら早い段階で抗リウマチ薬を開始し、それにより関節破壊を阻止しよう、となってきたのだという。

たとえば関節が腫れて痛む、という症状があると、診察・超音波・MRIのいずれかでほかの関節炎ではないかどうかを調べ、他の関節炎の疑いがない場合は、レントゲンで骨びらん(こつびらん=骨皮質が破壊されて虫食いになった状態)があるかどうかを調べる。骨びらんがあれば関節リウマチだと診断される。

治療薬にも変化が

ではどんな治療をするのか。治療は大きく薬による治療と手術による治療に分かれるが、まずは治療薬で関節の破壊を止め、それ以上の破壊を予防する。この治療薬も大きく変わりつつある。

従来のリウマチの主な治療薬は次のものだった。
非ステロイド性消炎鎮痛薬 関節の腫れや痛みをやわらげ、熱を下げる。
副腎皮質ホルモン(ステロイド薬) 炎症を抑える。免疫を抑える作用もある。一時的な使用に限定される。

これに加えて近年増えているのが以下の治療薬だ。
抗リウマチ薬 異常な免疫機能に作用したり、免疫を抑えることで病気の活動性を抑える。
生物学的製剤 関節リウマチの原因となる炎症性サイトカインなどの働きを直接抑える。

リウマチ白書によれば、ここ10年で、消炎鎮痛剤やステロイド剤の使用がやや減る一方、抗リウマチ薬の使用がやや増え、生物学的製剤の使用はものすごく増えているという。

効果が高い生物学的製剤

生物学的製剤とは、化学的に合成された薬ではなく、生物が作り出すたんぱく質をもとにバイオテクノロジーで作り出された薬だ。皮下注射や点滴などで投与され、炎症に関与するサイトカインに直接働きかけてその作用を弱める。

他の治療薬に比べて、骨や関節の変形・破壊を予防したり遅らせたりする効果が高いとされる。結果として内服薬の量も減らすことができることもあるという。しかし一方、副作用もあり、結核などの各種感染症に注意する必要がある。また薬の価格が高く、だいたい月に数万円、年にすると十数万円から数十万円かかるという。

なお、生物学的製剤には多くの種類があるが、効果の面からは薬剤の違いによる差はほとんどないとのことである。

これに続き、同センター薬剤部の平田絢子薬剤師より治療薬の詳しい解説が、同センターの針金健吾医師、佐原輝医師により手術療法についても詳細な解説があり、2時間はあっという間に過ぎた。予防したい病気などがある場合、最新の医学知識が得られる医療講座を探して受講してみてはどうだろうか。

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◆取材講座:「関節リウマチの最新の薬物治療と手術療法」(横浜市立大学市民医療講座)

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取材・文/まなナビ編集室 健康・医療取材チーム 写真/(c)GraphicsRF/fotolia

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