「はやぶさ」が世界で初めて惑星の小石を拾えた理由

語ろう! 宇宙への夢 月・火星への挑戦」シンポジウム(その3)@同志社大学

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土屋和雄先生

夢は次の夢を生む。次は2脚足ロボットで

夢を実現させると、新しい夢が生まれる。次のテーマは宇宙で歩ける「2脚ロボット」の開発だ。

宇宙の他の惑星を探査するロボットとなれば、平地ではなく多様な環境に対応できなければならない。ヒトは複雑な環境の中を巧みに歩いていく。そこで土屋先生は、人の歩行のメカニズムに注目した。人の歩行を数理化し、徹底的に分析を行ったのだ。土屋先生はいう。
「〈巧みな動き〉の背後には、それを可能にする力学的な本質があるのです。必要なのは、一番簡単なモデルを使って、数理的にその仕組みを明らかにすることです」

経験則の背後に潜む力学的な本質を抽出した “数理モデル” を使えば、ロボットにも人間と同じ、多様な環境に対応する歩行能力を与えることができるのではないか、というのが土屋先生の提言だった。

ちなみに、この “数理モデル” によるロボット開発のノウハウは、今後、リハビリテーションなど人の歩行問題を解決するためにも応用が期待できるのではないかと考えられており、この方向の研究も土屋先生の同志社大学宇宙医科学研究センターでの新しい研究課題になるという。

そして有人探査の夢を

講演後の質疑応答のなかで土屋先生は語った。

「はやぶさの構想が出たのは1980年代でした。その頃に今ある手持ちの道具でどこまで行けるのかやってみよう、ということで始まったプロジェクトだったのです。それなら小惑星に行って岩石を採ってこよう、と。『はやぶさ』の第1回の研究会の報告書の表紙にはアストロノーツ(宇宙飛行士)が岩を叩いている絵が描かれていました。有人探査は宇宙探査に携わる全ての人の夢なのです。しかし実際には無人の探査機になりました。現実は厳しい。しかし、夢が実現し、あるいは夢が消えることで、また新しい夢が生まれる。こんなふうに次々と夢が生まれる場所が、 “宇宙” なのです

宇宙に捧げられたあくなき情熱。この情熱が、この会場にいる若い研究者にきっと受け継がれていくのだろう。

「はやぶさ」の後継宇宙探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに到着するのは2018年。そこに1年半ほど留まり、2019年にリュウグウを出発し、地球に帰還するのは2020年末頃の予定である。宇宙がもっと手が届く存在になる日も近い。

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半年かけて火星に着く宇宙飛行士の筋トレ時間は?

取材講座データ
語ろう! 宇宙への夢 月・火星への挑戦」シンポジウム 同志社大学京田辺キャンパス 2017年3月10日

2017年3月10日取材

文・写真/植月ひろみ イラスト/池下章裕

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