認知症の初期症状は? 急激に増える魔の年代は?

認知症、ならないためにダイジェスト_1

認知症の記事は大人気。多くの人が心配し、関心を持っていることがわかりました。そこで、中でも特に熱心に読まれた記事をスペシャル版としてもう一度ダイジェストにして3回に渡ってお届けします。

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認知症の記事は大人気。多くの人が心配し、関心を持っていることがわかりました。そこで、中でも特に熱心に読まれた記事をスペシャル版としてもう一度ダイジェストにして3回に渡ってお届けします。

アルツハイマー型認知症の早期症状とは?

アルツハイマー型認知症の代表的な早期症状は、「新しく体験したこと、学んだことをきちんと記憶しておけない」という記憶障害です。薬の飲み忘れが増え、家にたくさん余っているのに、病院に行くと、お医者さんには「ちゃんと飲んでいます」と答えて、またもらってきます。散歩中に道に迷って帰ってこられないことがあっても、「買い物には自分で行っています」とウソをつくことも増えてきます。この段階になっても本人には認知症の自覚症状がないことが多く、家族への負担が大きくなります。こうなる前に早期発見する必要があるのです。

早期症状の場合、日々の生活の中で見たり聞いたりしたことを覚えていられなくなるため、今日の予定や約束を何度も尋ねます。日付もあいまいになってきて、何度も「今日、何日だっけ?」と聞いたりします。人に伝言を頼んでもきちんと伝わらなくなります。

お金の計算も不確かになってきます。買い物に行ってレジで「1,127円です」など半端な金額を言われると、小銭を持っていてもとっさに数えられず、2,000円を出してしまいます。いつもお札を出すので、財布の中はお釣りの小銭でいっぱいになります。また、新聞代や保険料などの支払いを忘れたり、逆に支払ったことを忘れて、もう一度払いに行ったりということも起こります。

「もの盗られ妄想」も、アルツハイマー型認知症の初期に現れる特徴です。たとえば財布をどこに置いたか忘れて見当たらないときに、「盗まれた」と思い込んでしまうのです。それも「妻(夫)に盗まれた」などと家族のせいにすることが多いので、ケンカの種になりやすいのです。毎日、朝昼晩と食べているのに、「うちの嫁は私にご飯を食べさせてくれない」などと言い出すこともあります。こうした被害妄想的な言動がみられたら、すみやかに診察を受けるよう考えてください。

被害妄想的な言動がみられたら、すみやかに診察を受けるよう考えてください

 

(ひとくちメモ)◎アルツハイマー型認知症とは
代表的な認知症で、認知症患者の約6割を占めます。記憶を司る脳内の海馬などが萎縮することで記憶障害が現れます。脳内に、アミロイドβというタンパク質が過剰に蓄積されることで神経細胞の働きが阻害され、病的な変化が起きると考えられています。

認知症の発生が急激に増える魔の年代とは?

認知症、ならないために:こぼれ話編 その3

認知症は高齢者の病気で、高齢になるほど発生数が増える——と考えられがちです。しかし5歳きざみの年齢層別に認知症の有病率をみると、ある年代で急増していることがわかりました。それは60代前半から後半にかけて、です。

認知症の有病率を年齢別に見ると、60〜64歳が0.189%、65〜69歳が2.9%です。この間、実に15倍増! ということになります。ちなみに70〜74歳は4.1%、75〜79歳は13.6%です。80〜84歳では21.8%となって「約4人に1人」に突入。85〜89歳は41.4%と半数に近づき、90〜94歳で61%と半数を超えます。

有病率だけでみれば、60代の認知症患者は3%弱で少ないですが、注目していただきたいのは、なぜこの年代に急増するかということです。一番の理由として考えられるのは定年退職です。会社や組織によって異なりますが、おおむね60〜65歳でしょう。

特に男性の場合、何十年も勤め上げた会社を離れ、仕事仲間と顔を合わせることもなくなり、生活がガラッと変わります。家で特にすることもなく、打ち込む趣味もなく、人づきあいも疎遠になり……、家に閉じこもりがちになる人も少なくありません。うつ症状に引き込まれる人も多いです。家庭で明るい会話ができればいいのですが、それも少ないと、「一日、誰ともしゃべらなかった」なんていうことになります。身体を動かすのがおっくうになって運動不足にもなりがち。こうなるとまさに「魔の年代」そのものです。

対策としては、仕事に代わる社会的活動、レジャー、ボランティアなどに関わることが一番です。他者とのコミュニケーションが脳の働きを活性化させるからです。予防医学的な研究によれば、社会的活動に積極的な人ほど認知症になりにくいといわれています。

そして趣味をもち、打ち込みましょう。写真を撮る、絵を描く、ガーデニング、観劇、スポーツ観戦、工芸、裁縫など、趣味に打ち込むことで脳は活性化します。ウォーキングやサイクリングなどのスポーツや旅行、自然散策など、身体を動かすことも認知症予防にもなります。今までできなかった勉強を始めるいい機会でもありますね。リタイア後のプランを練っておくことが、ひとつの認知症対策といえるでしょう。

(ひとくちメモ)◎認知症による“逆走”
警察庁の調べによると2010年9月〜2013年3月に高速道路で起きた車の“逆走”は612件。このうち65歳以上の運転手による逆走が66%を占めます。そしてその約半数の運転手が認知症か、その疑いがあったということです。

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ

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