英語が繋ぐ私とカンボジア

12月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト

にじままさん(27歳)/埼玉県/最近ハマっていること:フレーバーティー

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にじままさん(27歳)/埼玉県/最近ハマっていること:フレーバーティー

 2011年3月11日、東日本大震災が発生した日、当時大学生だった私は、インターンシップでカンボジアに滞在しており、有名な世界遺産であるアンコールワット遺跡を訪れていた。世界中の旅人が集まるアンコールワットでは、私が日本人だと分かるやいなや「家族は大丈夫か」、「日本がすぐに復興することを祈っている」とたくさんの外国人が英語で声をかけてくれた。この大地震を憂いているのは日本人だけではない。日本の出来事が英語で世界へ発信されることで世界中の人と繋がっているのだと感じられる瞬間だった。
 しかし、世界遺産から離れてカンボジア人が集まるマーケットでは英語は全く伝わらなかった。私はインターンシップに行く前に少し覚えたクメール語を使って買い物をした。簡単な英語と身振り手振りでも満足な買い物はできただろう。しかし、私はクメール語を使うことで店員が笑顔になることが嬉しくて、現地の人と話すときは、できる限りクメール語を使うようにしていた。英語が世界の共通語とはいえ、やはり現地の言葉で現地の人と会話をすることは楽しい。私はこのインターンシップがきっかけでカンボジアが大好きになり、もっとクメール語を勉強してカンボジアの発展に貢献できる仕事をしたいという目標を持って日本に帰国した。世界と繋がることも必要だが、一つの言葉で一つの国と深く関わっていくことも社会の貢献に繋がるはずだと信じていた。
 それから2年後の2013年3月に再びカンボジアに卒業旅行に出かけた。アジアの電子機器を扱う専門商社に就職が決まり、いつかカンボジアに繋がることを夢見て細々とクメール語を独学で学んでいた。クメール語の教材は旅行用の会話本だけだったが、それでも私の勉強の意欲を掻き立てるには十分だった。しかし、日本での2年とカンボジアの2年は同じ時間の経過ではなかった。どこに行っても通じる英語、クメール語で話しかけても「上手だね」と喜んでくれたが、英語で返される。観光で行くことができる地域にクメール語はもう必要なくなっていた。
 そして社会人になってからは、ひたすら英語学習に励んでいる。クメール語と違い、英語の教材はどれを選べばいいかと迷うほど溢れている。現在は結婚して子育てをしている為、仕事のツールとして英語を使うことはないが、英語に触れる機会はたくさんある。新婚旅行でいったキューバでも、国交がなかったにも関わらず英語が通じる国だと実感した。子どもの絵本を買うと英単語が記載されている絵本もたくさんある。やはり現段階では英語ほど身近にある言語はないと言い切れるだろう。だから英語学習が大切なのであり世界中の人が学ぶ言葉なのである。しかし、私は今でもクメール語を勉強していたことを無駄だったとは思っていない。私が語学を学ぶ意味は自分以外の人と繋がりを持つことだと思っている。英語とクメール語、言語は違えど、私にとって語学学習はその言葉を話す人と繋がりたいと思う気持ちの現れである。
 私が最後にカンボジアを訪れてから4年が経ち、今ではもっとカンボジアで英語を話す人の数は増えているだろう。私がこのまま英語学習を続けることでいつかどこかで英語を通してカンボジア人に忘れられない大切なカンボジアの思い出を伝えられる日が来るかもしれない。皮肉にも感じられるが、英語は私がカンボジアと繋がりたいと願った夢を叶えることができる言語なのである。

学びと私コンテスト

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