男の育休取得8割のスウェーデンに学ぶ少子化対策

国際時事問題入門@早稲田大学エクステンションセンター

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男の育休取得8割のスウェーデンに学ぶ少子化対策

男の育休取得8割のスウェーデンに学ぶ少子化対策

働いていた女性の7割が出産前に退社

「フランスやスウェーデンのように、女性の就労が進み、夫の家事・育児参加率が高い国や地域ほど、少子化が改善される傾向にあります。ですから、少子化対策としては第一に女性の社会進出の推進。それとセットで重要なのが男性の育児参加です」

2012年の日本女性の育児休暇取得率は83.6%。一見高いようにみえるこの数字だが、これは“働いている女性”のうちの8割。実際には、“働いていた女性”の7割近くが出産前に退社しているという現実がある。

また、1週間当たりの労働時間が50時間を超える労働者の割合は、フランスが5.7%、スウェーデンが1.9%に対して、日本は28.1%と先進国のなかでもダントツに高い。女性が働かず、労働のシェアができずに男性一馬力で稼いでいる傾向が数字にしっかりと表れているのだ。

その結果として当然ながら、男性の家事・育児時間の割合はスウェーデンが37.7%、フランスが34.3%に対して、日本は12.5%と著しく低くなっている。

「女性をどんどん就労させて、男性同様に仕事をさせるだけでも少子化は解決しないし、男女を逆転させて男性がメインで家事・育児をやるようにすればいいということでもない。女性も家事育児をしながら社会に出て、男性も仕事を続けながら育児家事が選択できる社会環境を作っていくが重要なのです」

10年前のスウェーデンとも大差が

「父親の育児休暇の取得率が約8割の国があります。どこでしょう?」と問われれば、多くの人は「スウェーデン!」と答えるだろう。しかしこの8割という数字が今から10年以上も前の2005年時点の数字だと聞けば驚くはずだ。

対して日本の男育児休暇取得率は2.65%。しかも2015年の数字である。10年のハンディを与えられても、“イクメン先進国”のスウェーデンに大差をつけられている。

「日本で男性の育児休暇取得率が伸びないのは意識の問題が大きい。東京都が実施したアンケートでは、男性も育児に〈積極的に参加した方がいい〉と答えた人より、〈仕事に支障のない範囲で参加したほうがいい〉と答える人が男女ともに上回っていました。日本人はいまだに、“育児は女で、男は仕事”という、80年代の感覚と価値観を男女ともに引きずっているんですよ」

つまり、日本の少子化対策のポイントは以下の3つ。
・男女平等化
・家事・育児・仕事のシェア
・意識の改革(男女ともに!)

「日本では、少子化問題や男女平等社会の課題が、フェミニズムなど女性的なテーマであると認識されてきたことも大きいと思います。少子化問題は国のあり方や存続に関わる国益の問題です。さらに世界的な視点で考えると、先進国は人口を維持し、途上国は人口を減らす努力をすることが求められています。“男は仕事”、“仕事や育児か二者択一”といったステレオタイプの価値観を、男女ともに改善しないと、日本の少子化問題は一向に解決しないでしょう」

〔今日の名言〕「日本人は出産・育児となると、男も女も頭の中が80年代」

〔大学のココイチ〕廃校小学校がそのまま教室に。窓からは校庭も見える。

〔受講生の今日イチ〕受講生は団塊世代の男性が多め。受講生の孫の世代には価値観が変わっていることを祈りたい。

〔おすすめ講座〕国際時事問題入門

取材講座データ
国際時事問題入門〜グローバル化を考える 早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校 2016年度秋期

2016年12月5日取材

文/露木彩 写真/Adobe Stock

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