死を学ぶと見えてくる「なんのために生きているのか」

生命の終わりとは何だろう?@東京農業大学

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東京農業大学・田中越郎教授 講座風景

東京農業大学・田中越郎教授 講座風景

移植医療の進歩により “脳死” という概念が登場した。いったんダメになった脳は復活しないが、心臓と呼吸は機械や薬で人工的に動かすことにより、脳以外の臓器ならその機能を維持することができる。つまり大脳がつかさどる、物事を考えたり言葉を話したりといった人間らしい活動はもうできないが、脳以外の臓器なら、移植することにより、ほかの人の治療に活かすこともできる。

こうした脳死状態は、“死” か “生” か。もしも親しい人が脳死と判定されたとき、生命の終わりだと、果たしてあなたは納得できるだろうか。

その人が死んでも誰かの中で生き続けるものがある

生命の究極の目的は遺伝子を次世代に伝えること。しかし私たちが生きる目的は子孫を残すことだけではないはずだ。

一つの指針として田中先生は、「使命」という言葉を挙げた。たとえばある人が使命感を持って伝えたこと、生き様、志は、その人が死んでも伝えた誰かの中で生き続け、次世代へも受け継がれるだろうという。

人の「使命」とは何か。

田中先生の話を聞きながら、記者は人として命ある限り懸命に生きることではないだろうかと考えた。

生きるために必要な「死の考察」

実はこの講座が初めて開講された2015年2月、偶然にも記者は一受講者として同じ東京農大のこの講座の教室にいた。その少し前に親を看取り、それまで抽象的なイメージだった死を、初めてこの目で直視したところだった。死を次世代に見せることも親の使命なのだと感動し、死について真っ向から考えてみたくなり受講したのだ。とても満足のいく「死の考察」の時間だった。

自殺死亡率が世界ワースト6位、先進国では最悪レベルだという日本。田中先生に、「若いのに死にたい人というのはどういうことなのでしょう?」と質問すると、田中先生は断言した。

「それは病なんです。生物というものは、次世代に命をつなぐべく、生きようとするものなのですから」

私の受講から約3年、田中先生が同講座を続ける中、若い世代の受講生が増えているというのはひとつの希望だ。

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取材講座:「生命の終わりとは何だろう? 老化とは何か。その仕組みと死の種類」(東京農大エクステンションセンター世田谷キャンパス)

文/斉藤直子 写真/まなナビ編集室

 

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