指で触って楽しむ「江戸のインターネット」浮世絵

【Interview】新藤茂先生「浮世絵随談」@神奈川大学公開講座

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――ちなみに、いま素手で浮世絵を持っていますが、手袋をしなくても大丈夫ですか?

よくそう聞かれるのですが、浮世絵は手袋で触っちゃダメなんです。浮世絵は薄い和紙に摺られているので。手袋で触ると指先の感覚がわからなくなって、持ったときにうっかり紙を折ったり、絵をこすったりすることもあるんです。

――なるほど……

もちろん触る前には、手の脂っ気を拭き取ることが大事ですが、実際の指先で厚さや重さを確認したほうがいいんです。これも、「実際に浮世絵に手で触れてみる」からこそ、わかることですよね。

両目をくりぬいた男も

次に見ていきたいのが、横川彫竹(横川竹次郎)という彫師の作品です。浮世絵師は、歌川国貞(三代豊国)です。これは安政6年(1859年)頃に摺られた作品なので、150年以上経過してますね。

4代目中村芝翫

――素朴な疑問なんですが、特に年号などが書かれているわけでもないのに、どうやって作られた年代がわかるのですか?

役者絵の場合は過去にどの歌舞伎役者がどの演目に出たのかという記録が大量に残っているので、作られた年代を特定しやすいんです。それが役者絵のおもしろいところのひとつです。しかも、この絵には、出版年月までわかる改印(あらためいん)と呼ばれる出版許可印があります。

この絵には3人の人物が描かれていますが、これは全部同じ役者で、四代目中村芝翫(しかん)という有名な役者さんです。現代では、「大芝翫(おおしかん)」と呼ばれてます。昨年、四代目中村橋之助さんが、八代目中村芝翫を襲名しましたね。

この一番上に描かれている「景清(かげきよ)」と記された目をつむっている男は、歌舞伎の知識が何もない人が見ると「寝ているのかな」と思っちゃいますけど、実はこれは、平家滅亡後を舞台に、平家の武将・平景清を題材にした有名な歌舞伎の演目なんです。「源氏の栄えるこの世を見たくない」と自分の両目をくりぬいて、信仰していた清水寺の観音様に目を奉納したという人で。

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