宇宙医学の進歩が寝たきり予防に役立つわけ

語ろう! 宇宙への夢 月・火星への挑戦」シンポジウム(その1)@同志社大学

超高齢社会を迎える日本に求められているのは、健康寿命を伸ばすこと。そのために10年前から注目されているのが「ロコモーティブシンドローム」(略して「ロコモ」)。筋力低下や骨粗しょう症などで運動機能が衰えてしまうことをいい、進行すると寝たきりとなる危険性が高い。そのロコモを救うヒントが “宇宙” にあるという。

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ジョンソン・スペースセンターのアンドレア・ハンソン博士(右)と、同志社大学宇宙医科学研究センターの大平充宣センター長(左)

超高齢社会を迎える日本に求められているのは、健康寿命を伸ばすこと。そのために10年前から注目されているのが「ロコモーティブシンドローム」(略して「ロコモ」)。筋力低下や骨粗しょう症などで運動機能が衰えてしまうことをいい、進行すると寝たきりとなる危険性が高い。そのロコモを救うヒントが “宇宙” にあるという。

宇宙では筋力が衰え骨からカルシウムが溶け出す

宇宙は微小重力で放射線の振りそそぐ、人体に有害な場所である。微小重力の環境下では下肢筋活動により静脈血が上半身によりしごき上げられるため顔がむくんだり、重力の負荷がないことから筋力が衰え、骨からカルシウムが溶け出すという。

しかし逆にそれが、地上での寝たきりに近い状態となるため、宇宙での筋力低下を予防することは、超高齢社会における寝たきりの予防医学の研究につながるという。

同志社大学京田辺キャンパスに昨年誕生したばかりの宇宙医科学研究センターが主催するシンポジウム「語ろう! 宇宙への夢 月・火星への挑戦ー宇宙環境への人体の適応機序解明と地球上の健康増進を目指して」で繰り広げられた講演は、そのひとつひとつが非常に興味深いものだった。

歩行ではなくホッピング

「月・火星環境では歩行における筋肉の活動はどう変わる?」と題した講演では、同志社大学スポーツ健康科学部准教授上林清孝先生が「サルコペニア」と「宇宙での歩行」について語った。「サルコペニア」とはギリシャ語で、筋肉(サルコ)が減少(ペニア)することをいい、ロコモーティブシンドロームの大きな要因となる。

元々の専門分野がリハビリテーションである上林先生は、宇宙空間での筋力維持方法を、加齢や疾患などによるサルコペニアやロコモの予防に応用する研究を続けている。

たとえば月面に降り立った宇宙飛行士は、月面をホッピングしながら移動した。微小重力の環境下ではかかとから着地する通常歩行が難しいためだ。宇宙空間でどの筋肉が使われ、どの筋肉が使われないのかを解明すれば、宇宙旅行で必要になるトレーニング部位が明らかになり、ひいては地上での歩行困難などの問題にも応用することが期待される。

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