古文書ブーム。くずし字学び家系図や掛け軸を解読

初歩からまなぶ古文書@早稲田大学エクステンションセンター

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判別できないときは文脈で

くずし字が似ていて判別できないときはどうすればよいのだろう。久保先生は端的に、「そこは文脈で理解しましょう」と言う。それは一つの漢字が二つ以上の読み方や意味を持つ場合も同じ。

「たとえば、『併』という字は〈しかしながら〉と読むことが多いですが、ここでは〈あは(わ)せて〉と読まないと意味が通じません。くずし字が読めるのも大切なことですが、その古文書の背後にある歴史的な経緯なども頭に入れながら読むと、どんどん読めるようになるし、おもしろくなりますよ」(久保先生)

くずし字の一文字一文字を時間をかけて読み解きはじめると、徐々に文書全体の言わんとしていることが理解できるようになる。点が線になり、線がストーリーになっていく。古文書初心者どころか入門者である記者も、板書を眺め、耳を傾けていると、なるほど、だんだんくずし字マジックにハマっていきそうになる。これが初の受講であるにもかかわらず、随分と上達したものだ。

掛け軸や浮世絵の文字が読めたら

講座終了後、隣で受講していた方が話してくれた。

「わたしは美術館巡りが大好きなんです。だけど、掛け軸や浮世絵の絵のそばにちょこっと書いてある内容がまったく読めないのがつまらなくて……。それで初めて古文書の講座に来てみたんです。すらすら読めるようになるにはまだまだだけど、でも、いつかそうなったら、楽しいですね」

久保先生によれば、美術愛好家や歴史愛好家、なかには代々伝わる文書を読みたいという人も受講しているそうだ。そうした人向けに、文字の読み方やテキストの内容・歴史的背景だけでなく、古文書まわりのちょっとした知識の解説もある。

受講した日は、文書の錯簡(さっかん)に注意しましょう、という助言を受けた。錯簡とは、ページの綴じ間違いのこと。たとえば帳簿などで、最初から帳面になっているものであれば錯簡は起きないが、後で帳簿にしたり、綴じ直したりする際に順番を間違えてしまうことがある。読むときには、そういうこともあることを念頭に置いて読みましょう、ということだ。

古文書はとても地味な世界だが、そこに書かれているのは200年前、300年前に実際に存在し、活動し、金銭のやりくりに悩んだり、褒められたり叱られたりした人々の記録そのものだ。リアルなメッセージから、江戸時代の人々の様子が垣間見られるとは、なんとロマンある楽しみだろう。

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取材講座:「初歩からまなぶ古文書」(早稲田大学エクステンションセンター八丁堀校)

文・写真/yukako

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