半年かけて火星に着く宇宙飛行士の筋トレ時間は?

語ろう! 宇宙への夢 月・火星への挑戦」シンポジウム(その2)@同志社大学

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アンドレア・ハンソン博士

出迎える人のいない火星に到着する宇宙飛行士

しかし往路6か月の間に、身体機能が衰えてしまったらどうなるのか。火星に到着したとき火星には、地球に帰還したときのように出迎えてくれる人はいないのだ。自らの力で着陸し、その後の探査をした上で地球に帰らなければならない。

火星旅行に人間が耐えるために必要なのが「トレーニング」だとハンソン博士は語る。筋肉量を維持し、骨密度を保ち、心肺機能を維持する。そのトレーニングを、宇宙船の中で行なうのである。

宇宙船の中での運動は、微小重力状態の中での運動となる。ただ運動すればいいというものではない。例えば、運動強度はどれくらいが適正なのか。一日何時間の運動をすれば維持できるのか。トレーニング用の機材を積むにしても、NASAの新型宇宙船「オリオン」は小さすぎて、機材を人数分詰め込むことは難しい。また、運動をし過ぎてもいけない。微小重量状態の中では、血液や体液の循環も地上とは異なるのだから。

宇宙に人体を適応させるための効果的で、効率的なトレーニング方法とは何か。ハンソン博士は動物実験などを行いながら、適切なトレーニング時間を導き出そうとしている。これが副題にある「宇宙環境への人体の適応機序解明」につながるのである。

そして同志社大学宇宙医科学研究センターもまた、この問題に取り組もうとしている。ハンソン博士は最後に同志社大学と桜の写真をあげ、「Congraturation!」 と基調講演を締めくくった。

日本が大好きなハンソン博士

〔前の記事〕宇宙医学の進歩が寝たきり予防に役立つわけ
(はやぶさのサンプル採取装置の開発者である京都大学工学研究科名誉教授・土屋和雄氏先生の記事は後日掲載いたします)

取材講座データ
語ろう! 宇宙への夢 月・火星への挑戦」シンポジウム 同志社大学京田辺キャンパス 2017年3月10日

2017年3月10日取材

文・写真/植月ひろみ

 

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