トレーナー「腰痛の原因は、肩・背・腿」!?

腰痛改善・予防のためのエクササイズ@国士舘大学

厚生労働省の調査で労災(休業4日以上)の6割が腰痛が原因だというデータがでているほど、腰痛は日本人の国民病となっている。しかし、筋トレをしても、流行りの体幹トレーニングをしても、なかなか改善しないという声も聞く。そこで、国士舘大学のフィットネス講座で講師を務めているトレーナーの脇坂大陽先生に腰痛の原因と対処を訊ねた。

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厚生労働省の調査で労災(休業4日以上)の6割が腰痛が原因だというデータがでているほど、腰痛は日本人の国民病となっている。しかし、筋トレをしても、流行りの体幹トレーニングをしても、なかなか改善しないという声も聞く。そこで、国士舘大学のフィットネス講座で講師を務めているトレーナーの脇坂大陽先生に腰痛の原因と対処を訊ねた。

剣道で腰痛が起こるのはなぜ

腰痛の原因のほとんどは、腰以外に原因があります

と語るのは、パーソナルトレーナーとして活躍する脇坂大陽先生だ。トレーナーとしてスポーツ選手のケガと長年向き合ってきた経験から、国士舘大学のトレーナー講座で学生トレーナーを育成するなど、トレーナーの普及活動にも力を入れて来た。

国士舘大学フィットネス講座で腰痛について語る脇坂先生

じつは脇坂先生自身、高校時代から腰痛に悩まされてきたのだという。やっていたスポーツは「剣道」だった。

「剣道なんて姿勢がいいし、腰痛なんて起こしそうにないでしょう? でも部員の3割くらいが腰痛だったんです。なぜだと思います? 

剣道は竹刀を頭の上まで振り上げますよね。こうしたスポーツをオーバーヘッドスポーツと言います。野球とかテニス、バドミントンとかもそうです。こうしたオーバーヘッドスポーツでは肩甲骨を酷使しますが、肩甲骨が柔軟でないと、背骨に負担がかかって腰痛になることがあるのです」(脇坂先生)

つまり、背骨周りで過剰に使いすぎる部分と使わない部分があると、そのひずみが腰痛となって出るというのである。

背骨は上から、頚椎、胸椎、腰椎

人間の背骨は24個ある。上から、頚椎(けいつい。7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、そして一番下に仙骨がある。

この中で最も動くのが頚椎だ。たしかに首は左右にたやすく動く。最も動かないのが腰椎で、私たちが腰をひねる時に動いているのは、じつは腰椎ではなく胸椎だ。胸椎の動きが悪いと腰椎に負担がかかり、結果、腰痛が起こる。

このように背骨はさまざまなところから腰痛を引き起こす。脇坂先生に事例を紹介してもらった。

猫背かどうか。その判定は?

腰痛の大きな原因は「猫背」だ。

猫背かどうかを判定するには、次の方法があるという。

足を伸ばして仰向けに寝る。そして腰の下に手のひらが何枚入るかチェックする。

もし1枚も入らなかったら猫背2枚以上入るようなら反り腰、1枚から1枚半入れば正常。猫背でも反り腰でも腰痛になるという。

肩甲骨が柔軟か。その判定は?

肩甲骨の固さから起きるのが、冒頭で紹介したオーバーヘッドスポーツで起こる腰痛だ。その判定は次のとおり。

足を伸ばして仰向けに寝る。そのままの姿勢でバンザイをする。
その時、腰の下の隙間は広くなる? それとも狭くなる?

広くなる人は、肩甲骨の周り、胸椎が硬くなっている。こういう人は手を頭の上に上げる動作を繰り返すと、腰痛が出やすいという。

ハムストリングが柔らかいか。その判定は?

腰痛の原因となるのは腰から上の部分だけではない。なんと太もも裏の筋肉(ハムストリング)の動きが悪いと腰痛になることがあるという。 大腿二頭筋(だいたいにとうきん)、半腱様筋(はんけんようきん)、半膜様筋(はんまくようきん)といった筋肉である。

足を伸ばして仰向けに寝る。そのままの姿勢で足を片方だけ持ち上げる。
90度まで足だけの力で持ち上げられるか。片足ずつ、両方の足でやってみよう。

90度まで上げる前にももの裏側が突っ張るという人は、もも裏のハムストリングという筋肉が硬くなっている。ハムストリングが硬いと腰が丸まりやすく、腰に負担がかかって腰痛になりやすいという。

ちなみに、右足と左足で持ち上げやすさが違う人は、骨盤が歪んでいる場合が多い。骨盤の歪みはやはり、腰痛の原因となる。

筋トレする前に背中や股関節を柔らかく

このように腰痛の原因は「腰」そのものではないことが多いので、むやみに腰を筋トレするのは逆効果になることがあるという。

「もちろん筋肉をつけるのは悪いことではありません。しかし筋トレですべてが解決するなら、ボディビルダーに腰痛の人はいないはずですよね。でも意外に多いんですよ、腰痛持ちのボディビルダーは。その理由は先ほど解説したように、肩甲骨や胸椎、ハムストリングの動きが悪いことにあります。

動きが悪いのに筋肉だけつけてしまうと、かえってケガをしたり、腰痛を悪化させたりします。

人間の体には肩甲骨、胸椎、股関節など、動くべきところがあります。そこを動かさないでいると、別の場所が過剰に動くことになります。

腰痛持ちの人は、肩甲骨周りやハムストリングを柔らかくすることから始めてはどうでしょうか

テレビや本の情報を鵜呑みにしない

脇坂先生が講師をしている国士舘大学のフィットネス講座の受講生の中には、まっすぐ歩けなかったが、講座を1か月受けたらまっすぐ歩けるようになった、という人もいる(前の記事「トレーナーが教える大学の腰痛講座の中身がスゴイ」)。その指導理念は、なぜその姿勢が悪いのか、そのためにどういう動きをすればいいのかをしっかり自分の頭で理解してもらい、納得してフィットネスを行うようにしてもらうことだという。

「健康にしてもダイエットにしても、テレビが言っていることすべてを鵜呑みにしないでほしいんです。健康の常識はどんどん変わっていきます。一つの情報だけを鵜呑みにしないで、なぜそうなのかと自分で考える力、自分にぴったりのものを選択する力を身につけてほしいと思います。

あと、とにかく日常生活が大事です。座り方ひとつでも筋肉を落とす座り方、腰を痛める座り方があります。どんなにフィットネスに通っても、その往復の車内で筋肉を落とす座り方をしていたら、せっかく鍛えても元も子もありません」

体幹トレーニングで効果が出ない人が多いわけ

流行りの体幹トレーニングについても一言。

「本などを読みながら体幹トレーニングを実践している人も多いと思いますが、はっきり言って効果が出るのは3割くらいの方だと思います。なぜなら、素人目にはできているようでも、プロからみたらちゃんとできていないからです。必要なのは、体の真っ直ぐをキープできるかどうか。これがなかなかできないんです。でも、そのちょっとした姿勢の違いが効果に大きく影響してきます。

筋トレもフィットネスも体幹トレーニングも、できればきちんとトレーナーがいる環境で、理論を学びながらやってもらいたいと思います」

脇坂大陽
わきさか・たいひ パーソナルトレーナー
中京大学体育学部健康科学科卒。アスリートのフィジカルトレーナーを長年経験したことから、ケガを防ぐためのトレーナーの大切さを痛感し、トレーナーを育成すべく全国でトレーナー育成セミナー講師として活動している。トレーナー育成団体運営。

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取材・写真/yukako、(c)bilderzwerg / fotolia 文/まなナビ編集室

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