タワマン階層や弁当 この世はマウンティングだらけ

杉山崇 神奈川大学人間科学部教授の「女子の人間関係論」その2@神奈川大学

ファミレスで楽しそうに開かれていたママ友会。しかしひとりが席を立った途端、「あの食べ方、ないよね~(苦笑)」と陰口をひそひそ…。実はこれ、相手を辱めて自分が優位に立つ“マウンティング”の一種。そのやり方は実に巧妙で、複雑化しているという。そこで今回は、日常に潜むさまざまなマウンティングのバリエーションを知ることから、対処法を探る。

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日常に潜むさまざまなマウンティング

ファミレスで楽しそうに開かれていたママ友会。しかしひとりが席を立った途端、「あの食べ方、ないよね~(苦笑)」と陰口をひそひそ…。実はこれ、相手を辱めて自分が優位に立つ“マウンティング”の一種。そのやり方は実に巧妙で、複雑化しているという。そこで今回は、日常に潜むさまざまなマウンティングのバリエーションを知ることから、対処法を探る。

王道のマウンティングは、やはり財力の誇示

“マウンティング”とは、相手に屈辱感や敗北感など心理的な苦痛を与え、自分が上であることを誇示することだ。昨年放映された連続ドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人~』(2016年、TBS系)では、ママカーストのマウンティング描写が恐ろしすぎると話題になった。

神奈川大学公開講座「大人の人間関係論」を担当する心理学者の杉山崇先生(同大人間科学部教授)は、タワマン・マウンティングにも要注意と語る。

「タワーマンションは高層階に行くほど値段が高い。つまり高層階という言葉を出すことで、財力があることを誇示できる。『高層マンションってなかなかエレベーター来なくて不便よねえ』とか『最上階から階段で降りるのもねえ』と、不便な話をしているようで、金持ち自慢をしているという、マウンティングです。『税金高くて困るよね~』という高額所得マウンティングと同じです」(杉山先生。以下「 」内同)

女性が“マウンティング女子”に陥りやすいメカニズムについては、前の記事「イライラ、陰口、マウンティング。女性部下の心理を学ぶ」で解説した。やられたらやり返す。“マウンティング女子”はマウンティング返しをするという。

「『こんないいことがあったの』という自慢をされたら、『それはよかったね。実は私もこういういいことがあったのよ~』と、相手よりもっといいことをアピールする。表面上はお互いに嬉しいことを報告し合っているように見えて、相手のマウンティングを潰すのです」

なかには謙遜を装ったマウンティングもあるから要注意だ。

「『きれいなお弁当~! 彩りがきれいですね~』と褒めた後で、『うちは旦那のこだわりがあって、加工食品とか使えないから、どうしても彩りが地味になっちゃうんです』と続ける。一見謙遜しているようで、“うちは食事に気を使って、こだわり食材を使ってます”とマウンティングしているわけです。ただし、これはお互いに高い食品リテラシー(食品への知識・活用する能力)を持っていて初めて通じるマウンティングです」

杉山先生曰く、マウンティングが成立するには、以下の2つの条件が必要だという。

マウンティングする側に、マウンティングをしているという気持ちが、意識的に、または無意識的にでもあること。
マウンティングされた側が、マウンティングされたと屈辱感を感じること。

「たとえば、子供にいろいろ習いごとをさせたり、高級ブランドの服や高級車を所有するなど、明らかにお金をたくさん持っているのに、『お金がない』とわざわざ言う人がいるとしますよね。それを聞いた人が“嫌味だな”と不快に感じて引きつったりすればマウンティングは大成功なのですが、素直に受け取って“お金がないなんて大変ね……”とリアクションされると、マウンティングは不成立です」

ママ友カースト・マウンティングは陰湿で長期化しやすい

陰湿で長期化しがちなのは、ママ友間のマウンティングだろう。ママ友グループ内のカースト(上下関係)が固まるまでは頻繁にマウンティングが行われ、カーストが固まってからもカーストを確認するために、上位のママが下位のママに繰り返すことが多々あるという。

「自宅にママ友を招いてお茶会をするとします。『みんなで役割分担しよう』とかいって、上位のママは料理の盛り付けとかを担当して、下位のママに片付けや子守りなど面倒な役割を押しつける。子守り担当になると、大人の会話にも入れず、家政婦かベビーシッターかのように使われるだけ、そもそも会話に入れる気がないんだということが、あえて口に出さずとも皆にわかるので、される側はかなり屈辱的ですね」

ステルスタイプのマウンティングも

相手に響かなかったらマウンティングにはならない、というのがセオリーだが、イレギュラーなケースもある。

「非常にいやらしいのが、された相手は気づかないけれど、やった方は非常に優越感を感じるという、気づかれない(ステルス)タイプのマウンティングです。

お育ちがいいと自負する人の場合、どこで勝負するかと言うと、“お作法”です。ターゲットに、あえて作法が問われること…たとえばお茶出しをお願いして、予想通り作法を間違えてもその場では見て見ぬ振りをするんですね。そして後から『やっぱりあの人はできないよね~』と、陰で笑いものにする。欠席裁判で安心してマウンティングする、小狡い方法です。こういうステルスタイプのマウンティングもあるということを知っておいてください」

〔今日の名言〕「相手が無自覚なら、マウンティングは成り立たない」

〔あわせて読みたい〕
イライラ、陰口、マウンティング。女性部下の心理を学ぶ

◆取材講座:メンタルヘルス・マネジメント講座「大人の人間関係論」vol.4女性同士の人間関係(神奈川大学みなとみらいエクステンションセンター

文/まなナビ編集室 写真/まなナビ編集室、(c)milatas / fotolia

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