なぜ脳は身体より先に老化してしまうのか

脳の老化ってどんなこと?~からだのサビが認知症を引き起こす!~(その1)@芝浦工業大学公開講座

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生理的老化は避けられないが、病的老化は阻止できる

それでは「脳の老化」を防ぐにはどうすれば良いのか。

誰でもできる方法は二つ。

1) 抗酸化成分の含まれる食事を摂る

カテキン(お茶に含まれる)、ポリフェノール(ウーロン茶、赤ワイン)、そしてビタミンCやビタミンEなどだ。そうすれば身体の中で酸化の進行を防ぐことができる。

2) もうひとつ大事なのが、規則正しい生活をすること。生活のリズムの乱れは、身体の代謝機能やホルモン、神経のバランスを崩す。食事として摂るべき上記の抗酸化成分以外にも、人間は身体の中に酸化を防ぐ成分がある。それらを存分に働かせるためにも、無理をせず、規則正しい生活することが一番だという。

講義中、福井先生が何度か強調するのが「老化とは避けられないもの」ということだ。ちまたでは「若返り」や「アンチエイジング」が流行り、まるで老化してきた道を逆戻りできるようにも聞こえるが、そんなことはあり得ない。

希望を打ち砕くようだが、話には続きがある。「生理的老化」により人間は必ず老化し、寿命を迎える。それはどうしようもない。だが、老化にはもうひとつ「病的老化」がある。これがあるから本来、生きられるのが妨げられ、寿命を縮めてしまう。「病的老化」を防げば、「生理的老化」で定められた寿命を全うできる。

では、「生理的老化」だけならば人間はどれほど生きられるのか。

あげられたのがフランス人女性の例だ。122歳まで生きた。日本でも1960年代は150人ほどしかいなかった100歳超の人(センテネリアン)が、2016年9月現在では6万5千人まで増えた。栄養をしっかり摂り、生活環境が良くなったことで「病的老化」が減り、ここまで人の寿命が延びたのだ。

前半、長寿の記録や統計などの事実が地道に積み上げられ、後半、身体(特に脳)が酸化する仕組み、そしてそれを防ぐ方法へと話が移っていくに連れて、初めは「まさか? あり得ないだろう」と思えた100歳超の寿命が現実味を持って迫ってくるから不思議だ。将来、本当に誰もが100歳以上を生きる時代が来るのだろう。

抗酸化成分を摂ることや、規則正しく生活することも、決して目新しい話ではない。だが、体系だった福井先生の話により、それがいかに大切なことか、改めて実感できる。

この日、隣の席で受講していた50代の女性は「健康については本当にいろいろな情報があふれていて、何が本当なのかわからず振り回されていました。こうして専門家の先生のお話を伺えると、自分で判断できますね」と語っていた。

(続く)

〔この日の3ポイント〕
・老化とは身体の酸化である
・酸化を防げば「病的老化」を防ぐことができる
・抗酸化成分を摂り、規則正しく生活することが大事

〔講演中の今日イチ〕「生理的老化」は避けられないが、寿命を縮める「病的老化」は防ぐことができる

〔受講生の今日イチ〕健康情報に振り回されていたが、しっかりした先生の話を聞いて道を見つけられた

取材講座データ
脳の老化ってどんなこと? 芝浦工業大学公開講座 2017年1月14日

2017年1月14日取材

文・写真/本山文明

〔関連講座〕脳にきく色 身体にきく色 ~思わず誰かに話したくなる、おもしろサイエンス!~

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