「老化防止ならウォーキングより家事」とリハビリのプロ

高齢者の体力づくり(その3)@昭和大学

高齢になり、筋肉量が減少し心身の活動が低下することを「フレイル」といい、要介護状態の一歩手前とされている。しかしここで踏みとどまれば、要介護となる時期を遅らせることができる。そのためにはなにをすればよいのか。昭和大学公開講座で同大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンターの認定作業療法士、渡部喬之先生は家事を勧めるという。

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高齢になり、筋肉量が減少し心身の活動が低下することを「フレイル」といい、要介護状態の一歩手前とされている。しかしここで踏みとどまれば、要介護となる時期を遅らせることができる。そのためにはなにをすればよいのか。昭和大学公開講座で同大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンターの認定作業療法士、渡部喬之先生は家事を勧めるという。

 ウォーキングするお父さんの活動量は?

渡部先生は、スポーツなどをしなくても、日ごろの生活の中で筋力を鍛えることは十分にできると言う。その例として、としおさんみきえさんという夫婦(ともに70才)の例を挙げた。

7時 朝食
9時 ウォーキング15分(週6日行う)
11時 新聞を読む
12時 昼食
14時 車でドライブ
16時 ウォーキング15分(週6日行う)
18時 夕食
19時 読書・テレビ鑑賞
22時 就寝

この中で体を動かす活動はウォーキングで1週間に30分×6=180分となる。

運動強度を表す単位に「メッツ」がある。メッツとは、安静時を1とした時と比較して、何倍のエネルギーを消費するかを示すもので、60分を1区切りとする。ウォーキングは3メッツとされているので、としおさんの活動量は1週間に3メッツ×3時間=9メッツとなる。

厚生労働省は健康づくりのための身体活動基準として、18才~64才までは3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分(23メッツ・時/週)65才以上なら強度を問わず身体活動を毎日40分以上(10メッツ・時/週)としている。(高血圧や心疾患などの持病のある方は別)

1週間に6日、朝夕ウォーキングするとしおさんの活動量は、厚生労働省の基準を満たしていないのである。

家事をするお母さんの運動強度は?

では、みきえさん(70才)の活動量はどうだろう。

7時 朝食作り 20分
9時 洗濯 20分
11時 テレビ鑑賞
12時 昼食作り 20分
14時 お風呂掃除 20分
16時 休憩
18時 夕食作り 40分
19時 読書・テレビ鑑賞
22時 就寝

じつはこの家事がばかにならないのだ。みきえさんは週1回家事をお休みすることにしているが、それでも週6日、この活動をしている。一日の身体活動時間は120分にもなる。

料理は2メッツ×80分×週6日=16メッツ
洗濯:2メッツ×20分×週6日=4メッツ
風呂掃除:3.5メッツ×20分×週6日=7メッツ

合計で27メッツにもなる。としおさんと比べて活動時間は4倍、活動量は3倍になる。

メッツであなたの活動量をチェック!

このように活動量を計るのにとても便利なメッツ。メッツの活動目安は次のとおり。

座って安静にしている 1メッツ
入浴、食事 1.5メッツ 
料理、洗濯 2メッツ 
皿洗い、ゴミ捨て 2.5メッツ
洗車、ストレッチ、ウォーキング、買い物 3メッツ
普通の掃除、お風呂掃除、ラジオ体操 3.5メッツ
庭掃除、介護、階段を上がる 4メッツ
早歩き、ゴルフ 4.5メッツ
子どもと遊ぶ、野球 5メッツ
室内での軽い運動 5.5メッツ
ウェイとトレーニング、家財道具の移動 6メッツ
エアロビクス 6.5メッツ
ジョギング 7メッツ
軽い山登り、軽いランニング 8メッツ
引っ越しの荷物運び、ランニング 9メッツ
格闘技 10メッツ
*すべて60分行った時の活動強度

繰り返すが、18才~64才までは3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分(23メッツ・時/週)65才以上なら強度を問わず身体活動を毎日40分以上(10メッツ・時/週)行おう。もちろん、高血圧や心疾患などの持病のある方は医師と相談の上行う必要がある。

 定年後、運動しなければと焦る気持ちもわからないではないが、ごく身近なところに活動量を上げるヒントがある。体力を強化し、しかも家族に感謝される「家事」を、ぜひ男性も見直して参加してほしいと渡部先生は語る。

それぞれの家事の具体的な効果については、次の記事「リハビリのプロがズバリ指摘『家事が老化防止によい理由』」で解説。

昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンターの渡部喬之作業療法士

◆取材講座:「生活の中での体力づくりとは?─活動を大切に─」(昭和大学公開講座/昭和大学藤が丘病院)

取材・文/土肥元子(まなナビ編集室) イラスト/(c)toyo/Fotolia

-講座レポート
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